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独学で生み出したゲームを介して、
プログラミングの楽しさを世界へ発信。

#06

ハックフォープレイ (株)

寺本 大輝
DAIKI TERAMOTO
Profile

1994年、金沢市生まれ。16歳でプログラミングと出会い、その面白さに感動し、独学で勉強。石川工業高等専門学校在学中の2014年7月、「HackforPlay」を開発し、「CVCK Award(クリエイティブベンチャーシティ金沢ビジネスプランアワード) 2014」で優秀賞を獲得。同年12月、『ハックフォープレイ株式会社』を創業。’15年、「起業家甲子園」で総務大臣賞、マイクロソフト賞、セプテーニ賞、D2C賞を受賞。同年、同高専学校を卒業。自社サービスを開発するほか、子ども向けのワークショップなども開催している。

「HackforPlay(ハックフォープレイ)」って何ですか?

プレイヤーとドラゴンが戦うゲームが入り口になっていて、インターネット上で誰でも遊べるサービスです。プレイヤーや敵のHP(体力)の値を変えたり、道を加えたり、BGMを流したりと、プログラミングを書き換えることで、ゲームをクリアしていけます。また、誰かがつくったステージを、他の人がさらに改造することで、新しいゲームがどんどん生まれる仕組みになっています。僕は、その基礎となるプラットホームを開発しました。「ハックフォープレイ」は、石川高専の5年の時、子どものプログラミング教育を研究テーマに取り上げてつくりました。

子どもがプログラミングを学ぶことの可能性を、僕は強く感じています。とても偏った考え方かもしれないけど、人類って少しずつ新しいものを取り入れて生活している生き物だから、大人になってからプログラミングを学び始めたところで新たに生み出せるものなど少ないだろうし、あんまり意味がない気がする。でも、これから生きていく子どもたちなら、自分らが想像もつかないものを生み出してくれるだろうという、過剰な期待があって。だから、子ども向けなんです。小学生を対象にした単発のワークショップのほか、週1回のスクールも開催していますが、みんな夢中になってプログラミングに取り組んでいますね。子どもならではの発想力の豊かさに、こちらも刺激を受けています。

起業のきっかけは?

僕は初めて石川高専で受けたプログラミングの授業で、その面白さの虜になりました。元々パソコンが好きで、知識もそれなりにあったけど、プログラミングを自由につかいこなせるようになったら、何でもできるような気がして、考えるだけでもワクワクして。人生に影響を与えてくれた先生もいました。プログラミングの授業で、僕のちょっとした工夫を、その先生がすごく褒めてくれ、みんなの前で発表する機会を与えてもらったことが嬉しくて、プログラミングにのめり込む大きなきっかけになったんです。

独学でプログラミングを勉強するうちに、「職業としてプログラミングで何か面白いことをしたい」との思いが生まれつつも、具体的に何をするかは決まってなかったんですが、4年生の終わりに、『ライフイズテック』という、IT教育に関する事業をやっている東京のベンチャー企業のCEO水野雄介さんが石川県で講演されたことがありました。中高生が楽しみながらプログラミングを学んでいるというプレゼンに感激して、僕も人生をかけてやってみたい気持ちが湧いてきたんです。そこで、僕は『ライフイズテック』の指導者を育成するメンタープログラムに応募して、3ヶ月間、東京と金沢を行き来して研修を受けました。そこで感じたのは、楽しく学ぶためには、教育現場を盛り上げてくれる人材の存在あってこそということ。これでは東京だから成り立つのであって、一部の子どもしか受けられない教育なんじゃないか、と。メソッドを広げるためには、人の手がかからないやり方で面白味を伝えることを実現せねばと思い、僕はプログラミング自体がゲームになること、それを誰でも自由に遊べる仕組みを考えたわけです。

それで、在学中につくり上げたのが「ハックフォープレイ」です。ウェブ上にアップしたら、反響が大きかったので、さらに続けていこうと思い、アップデートを重ねていきました。具体的なトリガー(きっかけ)になったのは、金沢市のITビジネスプラザ武蔵で年2回開催されている「CVCK Award 2014」で優秀賞を受賞して、50万円の賞金をもらったこと。学生の身には50万円って大きい。とりあえず借金からのスタートにならないし、たとえ失敗したってプラスマイナスゼロ。今は応援してくれていますが、当時反対していた両親には、「受賞したからやるしかないよね」と半ば強引に説得して、この賞金を資本金にして、在学中に起業しました。

もちろん、起業した後も大学や専攻科に進む道もあったし、社会経験を積むために一旦就職する選択もあった。でも、どちらの道も選ばなかったのは、なによりも自分の時間を手に入れるため。働けばきっといろんな知識が入って良いこともあるだろうけど、働く時間の対価以上に出来ないことが多くなってしまう。だから、自分の時間は自己責任で好きに使える方を取った。学校の講義に時間をとられるくらいなら就職するし、今後いつか大学に入ることだってできるから、今は「ハックフォープレイ」一本に集中しよう、と。逆に、「ハックフォープレイ」じゃなかったら、僕は間違いなく起業しなかったと言えます。

起業で大変だったことは?

苦労だらけです(笑)。電子情報工学科だったので、友達ともITの話しかしないような、極端な環境で過ごしたのもあり、まず社会常識を持っていないことが大変でした。領収書や請求書を誰が誰に出すのかさえ知らず、確定申告も失敗だらけ。ほかにも、ワークショップ開催のため、会場もカリキュラムも決めて、参加者を集める段階まできて、価格を適当に決めてしまい、後で計算したら赤字だったということも。今は、プログラミングとデザインを担当する開発スタッフが1人ずついますが、ほんとはビジネスがわかる人に入ってもらって、僕は何をつくるべきか考えることに集中していきたい。

金沢で起業したのは、家賃や食費など、無駄なことにお金や時間がかからない実家暮らしだからです。それで会社が成り立っている部分が大きいのも事実。現在は、開発をメインに、単発のワークショップや毎週開催のスクールのほか、システムを提供する「スクール運営事業」を始めています。とはいえ、こちらで企画する無料や参加費千円程度のワークショップや、授業料が月数千円のスクールでは正直大きな利益が出ません。スクール運営事業としては、「ハックフォープレイ」を教材として授業に取り入れてもらえるよう、学習塾などへ営業に回りはじめていますが、まだまだこれからです。今のところ、東京など全国からのワークショップの依頼などが、会社の利益の中心となっています。

これまで、金沢市のほか、石川県、一般社団法人『GEUDA』(ギウーダ)などからも助成金をもらって支援いただきました。周りの人からこんなのがあるよと紹介してもらい、助成金の申請や公募のコンテスト参加を続けています。ただ、コンテストってプロダクトの良さだけでは賞金が出ないものが多く、ビジネス絡みでないと。でも僕は、一貫してあくまでもつくりたいからつくったというスタンスで臨んでいます。

もし資金が潤沢にあったとしても、東京にはメリットを感じないから行かない。むしろ、プログラミング教育がいま盛んなアメリカで勝負したいですね。もちろん金沢にいながら事業は続けられますが、最初はその国のことをリアルに把握したいから、現地に行ってみないと。

これから起業する人へアドバイスを。

今の世の中だと、僕がやりたいことをやるには僕が起業するしかなかった。もし起業しなくちゃいけないなら、それをやりたい人が自ら起業するしかない。正しいスタートを切るためには、正しく導いてくれる仲間やアドバイザーが必要だと思います。誰にも理解されないと思っていても、「これだけはやるなよ」と教えてくれる人をつかまえてから起業しろ、といいます。東京では起業家のコミュニティ活動が盛んですが、自分の意見を出すためじゃなくて、失敗を共有するためにあると思う。なんで失敗したのかを教えてもらえることの方が大切なんじゃないですかね。

今後の展望は?

「ハックフォープレイ」をつくり続けていくことはこれからも変わらない。ワークショップは自分ひとりでは限界があるので、教えられるスタッフを増やして、この教材の魅力をもっと広げていきたいと考えています。もう少し先の展望としては、子どもたちには目的意識を持ってコードを書いてほしいし、ひいては社会貢献のためにコードを書いてもらいたい。そもそもプログラマーの目的は、アプリをつくるだけじゃなく、プログラマーのためにコードを書くこともある。大工さんがつかう道具をつくる鍛冶屋みたいなもの。プログラマーの関係性は無限につながり、ある人のために書いたコードがずっと生き続けていきます。プログラミングが生まれて50年間に、プログラマーたちにより蓄積された系譜によって、今のモダンなつくり方が出来上がっている。そう考えると、社会に必要とされる目的のためにコードを書くことは重要なんです。

僕は、これまで自分の中に閉じていた「ゲームをつくるゲーム」を、世界中に発信していきたい。多くの人に遊んでもらいたいという目的もありますが、素晴らしい世界がたくさんあることを伝えていくのが本当の目的だから。

編集:きどたまよ  撮影:黒川 博司

寺本 大輝 さんから secca inc. さんへ

#06寺本 大輝

DAIKI TERAMOTO

ハックフォープレイ (株)

最初の印象は、いい意味で”ザ・ベンチャー”で、やっていることがものすごく挑戦的だと感じました。いろんな話をするうちに、情報をキャッチアップしながらつくって、ああでもないこうでもないと苦労して完成させていく部分が見てとれて、完成されたものの見えない部分には、いろんなジレンマを抱えていることが、自分と同じだと思い、親近感が生まれました。そういう泥臭い部分を知ったからこそ、なおさらカッコいいベンチャーだと思えます。僕にとって良き相談相手です。