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2017.10/11 Report

コアキナイ塾 vol.1 REPORT

コアキナイ塾 vol.1 REPORT

2017年6月、はたらこう課の中から産声をあげた新プロジェクト「コアキナイ塾」。
“学び”、“考え”、“一歩を踏み出す”という3つの視点を軸に、みんなで語り合いながら、自分らしい仕事のアイデアをカタチにしていく。そんなまちなかの「学び場」が、このたび新しくスタートしました。

計4回のプログラムを予定しているコアキナイ塾ですが、記念すべき第1回目が先日6月30日に開催されたということで、一体どんな場になったのか、気になる初回の内容をレポートしたいと思います!

“つなぐ”でつくる、自分らしい仕事って?

今回の会場となったのは、金沢市武蔵町にある百貨店『めいてつ・エムザ』、ではなくて、そこに隣接する『ITビジネスプラザ武蔵』。「まさかこんなところに公共施設が・・・!」と思わずにはいられない立地ですが、ITやデザインの分野で新たなチャレンジを支援している、ユニークなインキュベーション施設でもあるのです。

当日は、梅雨どきのシトシト雨にも関わらず、仕事帰りや学校帰りの参加者約20名が集ってくださり、木の温かみあるサロンスペースの雰囲気もあいまってか、ゆったりとした雰囲気でスタートしました。

今回は、「“つなぐ”でつくる自分らしい仕事のカタチ」というテーマにふさわしく、人と人の出会いでワクワクをつくりだしている、2名のゲストにお越しいただきました。
一人目は、加賀市で高校生向けの学習塾『タビト學舎』の代表、飯貝誠(いいがい・まこと)さん、そしてもうお一人は、金沢市を拠点にPR業で東京と金沢をつなぐ『オフィス シュナイダー』代表の手島(てじま)シークリンデさんです。
しかし、ここはコアキナイ塾。進行役だって、現役起業家が務めてこその、コアキナイ塾。
というわけで、以前「はたらこう課」のリレーインタビューにも登場した、株式会社MONKの村田智(むらた・さとし)さんに、コアキナイ塾全4回のホスト役を担っていただきます。
さて、今回のテーマは「“つなぐ”でつくる仕事」ということですが、みなさんは、かの有名なスティーブ・ジョブズ氏がこんな格言を残していること、ご存知でしょうか?

「過去を振り返って点を結ぶだけだ。だから、いつかどうにかして点は結ばれると信じなければならない。」
今回のゲストである飯貝さんと手島さんが、これまでどんな点を歩んでこられたのか。
そしてそれがいま、どんな線となって、どんなつながりを生み出しているのか。
それぞれの起業に至るまでのストーリーを、「なぜ」、「どうやって」、「なんのために」という3つの点になぞらえながら、ご紹介していきたいと思います。

誰だって、自分だからこそ気付ける“小さな可能性”が、ある。

飯貝誠さんは、2016年4月にオープンしてまだ1年ちょっとにも関わらず、生徒数58名を持つ『タビト學舎』の代表。さぞ教育街道をひた進んできた人物なのかと思いきや、タビト學舎を立ち上げたその理由に、予想を超える発言が飛び出します。
飯貝)僕、元々IT関係のエンジニアをしていたんですけど、ある日会社を辞めて、結婚を機に妻と一緒に、575日間の世界一周旅行へ出かけたんですよね。それで、そのあとに地元の加賀市に戻ってきたら、デパートがなくなってて、あるのはコンビニとドラッグストア、高齢者の介護施設だけ。しかも地元の高校は定員割れ。あぁ、この先このまちはどうなっちゃうんだろうって思ったんですね。ちょうどそのとき、学習塾をやっている知り合いから「世界一周の話をしてくれないか?」と頼まれて、話をしたのがきっかけでいつの間にか教育の道に足を踏み入れていたというのかな。その中で、旅に出てたくさんの人に出会って、いろんな価値観があることを知った僕だからこそできる“場づくり”があるんじゃないかって気付いたんです。それで、旅と人を掛けた『タビト』をコンセプトに、まちの中で大人と高校生が交流できる拠点としての塾、をつくることにしたんですよね。

一方の手島さんも、2015年4月に東京からUターン。2人の子供を持つママとして子育てをしながら、大好きな金沢をPRするために、自ら『オフィス シュナイダー』を設立。ということは、これまでまちづくりの仕事を手掛けてきた敏腕PRに違いない。
そう思っていたら、実は手島さんも異分野から今のポジションに辿り着いたと言います。
手島)私、昔から洋服が大好きで、雑誌も1ヶ月に何冊も読むくらいだったので、大学卒業後は迷わずアパレルブランドに入社したんですね。そこからPRに転身してずっと華やかなアパレル業界に身を置いていたんですけど、出産を機に自分の生まれ育った金沢を振り返ると、その環境の良さに改めて気付かされて。それでUターンしてきたんです。と同時に、金沢のまちを客観視したときに、新しくて素晴らしい商品がたくさん生まれているのに、それらがうまく「売られていない」ように見えたんです。それって実は、すごくもったいないことだなって。だったら、これまでPRという視点でものづくりに関わってきた私なりの視点で、金沢の良さやコアな部分をもっといろんな人に知ってもらいたい。そう思ったら自然と今の仕事のスタイルに行き着いた感じです。

基本的にシャイな県民性と言われる石川県らしく、時折小さな笑いが混じるゆるやかな雰囲気のなか、お二人の経歴に少々意外な表情を浮かべる参加者のみなさんも、ちらほら。
そんなゲストのお二人は、具体的にどんな方法で点と点をつなぐ仕事をしているのでしょうか。

つなげることで、多様な化学変化を生みだせる

飯貝)タビト學舎は、基本塾ではあるのですが、普通の学習塾とはちょっと違う“場づくり”をしているんですね。一つは、高校生向けに勉強を教える傍ら、キャリア教育について学ぶワークショップをやっています。
高校生って、実は授業や受験勉強、部活にとすごく忙しいので、塾という場所に大学生や社会人を招いて、そこでいろんな対話の時間を持てるようにしたスタイルですね。もう一つは、大人向けの“サードプレイス”としても利用できるようにしていて、カフェを開業したい大学生に貸したり、育児サークルのママたちが自分でつくったものを売る場所として使ってもらったり。あとは今加賀市で始まる地域おこしのプロジェクトに協力していることもあって、タビト學舎でミーティングが開かれていたり(笑)。そうやっていろんな人が集い使ってもらえることで、自然と多様な年齢や価値観が混ざり合う場になるような環境を、あえてデザインしています。
手島)PRと言われるとなかなか仕事内容がイメージしにくいかもしれないですが、簡単に言えばブランディングの全権を握る役割ですね。なので、例えば東京から金沢にお店を出したいというクライアントさんのために、出店の際の見せ方やメディアへの打ち出し方はもちろん、地元との折衝なんかも担当するわけです。その最たる例が、ひがし茶屋街にオープンした「カフェ多聞」なんですけど、オーナーがタレントのMEGUMIさんなので金沢には頻繁に来られない。そこで私が共同責任者というカタチで、スタッフの面接から商品開発、お店の細かいオペレーションなど、私が間に入ることで東京や金沢にあるいろんな点々が結びつくようなことを全部やっているという感じでしょうか(笑)。
一つひとつを取り上げてみてみれば、お二人ともバラバラなことを手掛けているように思うのですが、俯瞰してみれば、人やモノ、場所を結び、今までになかったきっかけや選択肢をつくっていく、そんな“つなぎ手”だということが、よくわかります。

等身大の自分で、自分の人生をつくっていく。

と、ここで進行役の村田さんから参加者のみなさんに、クエスチョン。
「みなさんは、自分の個性をわかっていますか?」

自分の個性・・・、改めて問われると、何を個性と言っていいのやら。
すぐに胸を張って答えられる人は、なかなかいないのではないでしょうか。
しかし、起業をするということは「自分の個性を知ることから始まる」と村田さんは言います。
自分が何をやろうとしているのか、同じようなことをやっているところはないのか。そして、誰のために、何のためにやるのかということ。自分の特長を知ることは、ひるがえって、自分の足りない要素に気付けることでもあるという話に、思わずハッと気付かされた参加者も中にはいらっしゃったように見受けられました。

「やりたいこと・自分が楽しめることを極めることで、自然とその先にいる“誰か”の役に立っていく。
それは、まさにライフスタイルを自分でデザインすることなんだ」と話す飯貝さん。
「人の評価に一喜一憂せず、自分がどうしたいか、どうあるべきか。
誰にも邪魔されることなく、“自分が、自分らしく仕事をしていいと認めること”」と話す手島さん。

なんのために起業したのかというその矢印が、しっかりと自分自身を通じて発信されているお二人の姿勢がとても印象的だったように思います。起業と聞けば、自分が何かをつくったり、場を持つことがスタンダードだと思う方も、多いかもしれません。しかしお二人のように、新しい可能性が広がっていく仕掛けを生み出す、そんな“立役者”としての起業もアリだということ。そんなヒントが随所に詰まっているトークセッションでした。

“つなぐ”仕事と一口にいっても、何をつなぐか、どうつなぐかで、そのバリエーションは無限大に広がっていきます。しかしただつなぐだけではなく、目に見えない想いや縁までを丁寧につないでいくことで、社会にも影響を及ぼすようなムーブメントにも成りえる。トークセッションが終わったあとに開かれた交流会で、参加者のみなさんが盛り上がっている様子をみていると、コアキナイ塾が秘めた可能性を感じさせてくれる、そんな一日となったように思います。
さて、第2回目は8月31日(木)、今年新しく竪町通りにオープンした文化服装学院の新校舎(竪町校舎)の2F「ハルモニー」にて開催します!
次回も魅力的なゲストが登場しますので、お楽しみに!

文:喜多 舞衣(オノマトペ)

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