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2022.03/29 Report

「0→1 KANAZAWA U-18」REPORT〈DAY2〉

「金沢の地域文化」をテーマに、ビジネスプランを考えよう

2022年1月9日と2月13日の2日間、金沢市野町「金沢未来のまち創造館」で金沢市内の高校生を対象とした、金沢市次世代起業家育成事業の起業イベント「0→1(ゼロイチ) KANAZAWA U-18」が行われました。第2回のテーマは「金沢の地域・文化を、ビジネスでアップデート」。前回に引き続き、ファシリテーターを「株式会社ガクトラボ」代表取締役の仁志出憲聖さんが務めました。当日の様子をレポートします。
会場は「金沢未来のまち創造館」2階の「起業のまち」フロア。イベントタイトルになっている「ゼロイチ」とは、0から1を生み出すこと、まだ世の中にない新たなモノ・サービスなどの価値を生み出すことです。当日は前回の参加者だけでなく、今回が初めてという高校生も集まりました。
冒頭、仁志出さんから高校生たちへメッセージが贈られました。「今は意欲さえあれば、誰にでもゼロイチのチャンスがある時代。高校生のなかにも起業している人はたくさんいます。このイベントは、ゼロイチしたい高校生を金沢にある学校や企業、市など全体で応援するのが目的です。皆さんにもぜひ起業に挑戦してもらいたいと思います」。
仁志出さんが説明したルールは3つ。「起業するマインドで参加すること」、「インプット、アウトプット、シェア、フィードバックの学びのサイクルを回転させること」、そして「疑問をどんどん出すこと」です。

まずは一つ目のワークショップとして「金沢の地域文化」から連想したワードをマンダラートに書き込んでいきます。高校生たちは「加賀友禅」や「金沢カレー」、「自然」、「金箔」など思い浮かぶワードを次々と書き込んだ後、各自が制作したマンダラートをもとにグループ内でプレゼンを行いました。
二つ目のワークショップでは、「金沢の地域文化」から連想したワードをもとに、ビジネスアイディアを考えます。グループ内の仲間に相談をしたりゲストコーチからアドバイスをもらったりして、それぞれのビジネスアイディアを生み出しました。
続いてゼロイチの先輩から話を伺います。一人目の先輩は「株式会社雪花」代表取締役の上町達也さんです。伝統工芸から最新のテクノロジーまで幅広い技術やデザインを掛け合わせたものづくりを行うクリエイター集団「雪花(secca)」。上町さんは2013年の創業以来、「secca “と” を大切にしている」と話します。例えば料理をのせる器。一方的に作って終わりということではなく、料理人に対して「こんな器を作ってみたけど、どうでしょうか?」と投げかけ、そこで生まれる化学反応やセッションを楽しむ姿勢を大切にしているのだそう。
上町さんは「ゼロイチというと、“全くのゼロから新しい何かを生み出す”と思いがちですが、先人が生み出したものの中に何かヒントやインパクトがあり、そこから新しい“問い”が生まれることが、ゼロイチなのでは」と言い「“ゼロ”を定義するときに起点となるのは、“問い”である」と語りました。
続いて創業110年の老舗「株式会社ヤマト醤油味噌」五代目でBtoC営業部長の山本耕平さんのお話です。新型コロナウイルスの感染拡大により主力商品の醤油や糀の販売量が大幅に減少するなかで、何とか現状を打破しようと、山本さんは「企業内起業」によりゼロイチに取り組みました。
試行錯誤のなかで考え出したのは、糀を使ったスイーツです。山本さんによると「糀は最高の助演俳優」。この糀を生かしたチーズケーキを作り、専門店「こめトはな」を立ち上げました。「コロナ禍で生まれたチーズケーキのように、本業である糀や醤油を軸にして、別の領域に展開していくのが僕の仕事です」と話します。
先輩方の話を伺ったあとは、二手に分かれて質疑応答を行いました。高校生の「どのように商品開発をしていますか?」との問いに、「新たな商品を作ろうと思ったときに、“どんなものが欲しいか”をユーザーや消費者に質問しても、なかなか出てこないものです。なるべく先回りして、その人たちの深層心理を探るようにしています」と上町さん。

また「県外出身者である上町さんは、金沢でどのように仲間を見つけたのですか?」という質問には、「人には磁力があると思っていて、“めちゃくちゃこれをやってみたい!”というものがある人は、同じような人と同じような目的の場所で会えるような気がしています。だけど待っているよりも自分で掴み取りに行くことが大切。出会いは足で稼ぐものです。全てのアクションが未来につながっていくので、まずはアクションを起こすことですね」と伝えました。
こちらは山本さんのグループ。自身の体験をふまえ「ゼロイチで大事なのは、仲間をつくること」と話す山本さん。「僕は地元の経営者たちとつながることや、何気ない会話を大切にしています。それと周りの人から“これやってみたら”と言われたら、とにかくチャレンジしてみること。自分が考えている“自分”よりも、相手に見えている“自分”の方が、ずっとよく見えているかも知れません。だからこそ、周りのアドバイスは大切にしています」と言います。

また、会社の従業員研修にも力を入れていると言い、「組織の内部を変えるためには、5年後の道筋を示すことが大切です。僕は横のつながりや、下の世代も含めて社内で仲間を募りました。でも、最初は“一人でもやる”という意気込みが大切。賛同者を得ることが目的でやるのではありません。はじめは一人でも、一生懸命やっていれば応援してくれる人は必ず現れます」と高校生たちにメッセージを送りました。
後半の部では、まず前半に考えたビジネスアイディアを、一人100秒の持ち時間でプレゼンテーションしました。自由な発想で生み出されたアイディアは、まさに十人十色。「金沢の芸術✖️スポーツ」や「郷土料理✖️インスタ映え」、「片町ストリートを盛り上げる」、「観光客とご当地グルメのシェフをつなぐ」など面白い提案が次々と飛び出しました。
各自プレゼンを終えたあとは、関心のあるビジネスアイディアに投票し、3つのチームに分かれました。いよいよ最後のワークショップ「チームでビジネスプランを作ろう」です。仁志出さんから「“どんな価値を提供するか”をポイントに、みなさんで協力して取り組んでください」とアドバイスが送られました。
「誰のために?何を?いくらで売る?」をベースに、チームごとにビジネスプランを考えます。チームによって進行方向はさまざま。ゲストコーチから質問を投げかけられたり、チーム内で意見を交わしたりしながら制限時間ギリギリまで内容を磨きます。
チームごとの発表です。「あきないあそびば」を提案したのは、レンさん、ひなたさん、オサムさんチーム。街なかに若い人たちが集まったり休んだり遊んだりできる場所を作りたいとの思いから、フロアごとにコンセプトが異なり、その時々で出店者やイベントが変わる「飽きない」遊び場を考えました。

続いて、りりはさん、みおさん、さんごさん、うっちーさんチームが「学校でフリマを開く」ビジネスアイディアをプレゼン。学校という「場」を活用して、テナント費用など固定費がネックとなっているクリエイターにビジネスの空間を提供することで、未来の起業家と行政がつながる機会をつくるアイディアです。

最後はみずほさん、ももさん、ゴウさん、あやねさんチームの「近代建築✖️和菓子(加賀野菜)」。石川県内の農家と和菓子店のつながりを創出し、近代建築に展示することで幅広い世代の人たちにその取り組みを知ってもらおうと考えました。また、規格外となった加賀野菜を使用することで、SDGsの取り組みにもつなげる狙いです。
各チームに対してゲストコーチがアドバイスや感想を述べ、その後、高校生へメッセージが送られました。「3チームそれぞれ、『誰のために?何を?いくらで?』の掘り下げ方が違っていて興味深かったです。僕は家業を引き継ぐ立場なのですが、代々大切にしているのは、“はたらく”とは“側(はた)の人を楽(らく)にする”という考え方です。労働は決して苦役ではありませんし、働く人を楽しくするという意識が大切だと思っています。皆さんはビジネスプランを実現することで、誰を楽しませたいと思っていますか?今日は“はたらく”という言葉を贈って終わりたいと思います」と山本さん。
続いて上町さんが「参加した皆さんの意欲、それぞれから生まれたゼロイチのアイディアに感動しました。世の中にはイヤイヤ働いている人が少なくないですが、一人でも多くの人が、自分のやりたいことを仕事にできれば社会はよくなると考えています。皆さんも絶対にできると思います。ぜひ、やりたいことと向き合い続けて下さい」と語りました。
2日間、自分が持っている課題意識や探究心ととことん向き合い、他の参加者と互いに助け合いながらアイディアを出したりプランを練ったりして、大いに学んだ皆さん。ゲストコーチからもらったアドバイスや、ここで出会った仲間とのつながりを大切にしながら「自分のやりたいこと」を実現できるよう、私たち大人も応援しています。
編集:井上奈那

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