はたらこう課

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2023.02/10 Report

はたらこう課座談会 vol.2

はたらこう課ネットワークで何ができる?
〜おじさんたちだって悩むのだ〜

金沢で活躍する起業家たちのホンネを聞き出し活動に活かすべく、不定期に開催している「はたらこう課座談会」。長いコロナ禍を経て、2022年9月「金沢未来のまち創造館」にて、実に2年ぶりに開催されました。久々の開催とあって、少しドキドキしながら「はたらこう課ネットワーク」にお誘いを投げかけたところ、山岸浩也さん、岩本守雅さん、森﨑和宏さんの3名の起業家がお忙しい中駆けつけてくださいました。
「そもそもなんで起業支援をしているの?」といった素朴な疑問から、40代にぶつかる壁(⁉️)に至るまで、起業家ならではの視点からざっくばらんに繰り広げられる懇談。その様子をレポートいたします。

多様な起業家が活躍する「街の景色」

−−今日は「はたらこう課を活用してどのようなことができるか」ということや「起業しやすいまちづくりのための施策」などについて、それについてざっくばらんに話ができたらと思っています。

山岸:素朴な質問をしてもいいですか?はたらこう課では「移住」と「起業」を支援されているということですが、それは何を目的として市として支援されているんでしょう?移住促進の方のメリットは何となく分かる気がするんですが。
宮本(金沢市産業政策課):「起業家を育てたい」という想いは、金沢市に限ったことではなく国としても推し進めていることではありますよね。日本は「一回失敗したらもうダメだ」とか、起業しにくいマインドや制度の課題があると思います。だから市としても、積極的に起業を支援しています。

山岸:それでいうと、国で進めている「起業」のイメージって、もっとベンチャー寄りなイメージというか。実際、金沢での個人の起業は「カフェやります」とか「デザインします」といった小規模な事業が多いと思うので、税収とかもそんなに大きく変わらない気がしますが。

宮本:あとは「地域を盛り上げたい」という目的もあります。例えば若手起業家が商店街の空き店舗などで事業始めてくれると、街が活気付く。郊外型の大規模なショッピングモールなど、大企業一強ではない商圏というか。

山岸:確かに「いろんな人がいろんなことやっている」状況は街の活性化に絶対良いですよね。お金がどうというよりも“街の景色”としていい。
宮本:なので、市としても起業をサポートする補助金制度などがありまして、そのうちの一つが「はたらこう課」で、特に若い方の起業をサポートしたいなと。

山岸:どこまでサポートするか、というのは一つありますよね。逆にやりたい人ってサポートしなくても起業すると思うし、起業自体も10年前に比べててすごくしやすくなっているから、そこに対するプレッシャーってあんまりないんじゃないかな。むしろ、その後の「うまく軌道に乗せられるか」の方が重要というか、金沢市を盛り上げるという意味ではサポートしがいがあるんじゃないかという気はします。

−−金沢市のホームページにも、色々な制度やサポートの情報は載っているけれど、そこにリーチできている人は多くありません。「はたらこう課」はそこにリーチするためのハブ的な役割もあって。ただ、今後続けていく中で、そちらのサポートが重要ということになれば、そのためのきっかけづくりになるようなことは考えられるのかなと。

現状を変えてきたのは、いつも「ちょっと一歩踏み出す勇気」

山岸:もちろん「個人でやらなくてはいけない」ということには変わりないのだけれど、個人で仕事をしていると忙しくて外にも出ず、こぢんまりとした自分の世界でやってしまう人もいると思う。そういう人も参加しやすい場所とかが、あるといいのかも。

岩本:もしかしたら金沢市はちょっと独特なんかなぁと思うんです。「集まれる場所がない」という話は、金沢に移住してきた人たちの会話でよく耳にします。皆それぞれにやっていて、群れるのを嫌がるところがあるのかな?集まれる場所があったとしても、ちょっと排他的なところがあるのかもしれないし。僕もこっちに長く住んでいるけど、未だに入りづらい(笑)。
自分で切り開いていけるタイプの人はいいと思うんですけれど、ちょっと引っ込み思案だけど「何かやりたい」という人も結構いるんじゃないかなと。
−−ちなみに、森崎さんは普段こういう場にはあまり参加されないタイプとうかがっていますが、今日はどうしてご参加いただけたのでしょう?そこに今後の展開の可能性がある気がしています。

森崎:個人的に今後の仕事の方向性について考えるところがあったというか。何かちょっと違うことを、その可能性をぼんやりと考えていたんです。
これまでも、何か新しいことが始まったきっかけって、こういう「ちょっと一歩踏み出す勇気」みたいなきっかけから始まってきているなと。普段の生活を繰り返していても変わらないというか「待っていても変わらない」というのは実体験としてある。だからいろんな人に会えるかなと思って今回参加しましたが、知り合いしかいなかったという(笑)。

岩本&山岸:それでいうとここ3人一緒(笑)。僕らも同じこと考えてる。
−−森崎さんは36歳で、岩本さん40歳、山岸さんは42歳ー…いわば“アラフォー”ですよね。40代って、ふと立ち止まって考える年代なのでしょうか。

山岸:40歳くらいって漠然とした不安を感じるようになるというか。起業したての30代は目の前のやらなくてはいけない仕事に追われていて、でもその縁で知り合いも増えて行って。自分のできることの範囲も広がって「こんなこともできるかもしれない」という、ある意味可能性に満ちているのが30代後半くらい。そして40代になると、今度は「かといっても…」みたいなフェーズに入るんです(笑)。体力とか自分のスキルとか、有限である現実が見えてくる。

岩本:新しいことをやる一歩が、なかなか出なくなるというか。始めるだけなら簡単だけど、これまでやってきて色んな事情が見える分「同じだけの熱量をこっちにも注げるか?」と、モヤモヤと考え込んでしまったり(笑)。

煮詰まったら「はたらこう課BAR」へ行こう

山岸:さっき森崎さんが話していたような「悩み」って、実はみんな抱えているはず。だから「はたらこうかBAR」みたいなのを街なかに作ったらどうかなと。
僕が仕事に行き詰まった時は、とりあえずバーに行くんです。そこで悩みを聞いてもらったりいろんな人の話を聞いているうちに「また頑張ろうかな」って気持ちになる。それぐらいの気軽さというか、オープンで普段から行ける場所がもしあったら良いなと。


岩本:それでいうと山ちゃん(山岸さん)の事務所が、僕にとってまさにその場で。山ちゃんの事務所から見える犀川がめちゃめちゃ綺麗で、しかも自家焙煎のコーヒーも出してもらえて。モヤモヤしたときに、コーヒーを三日連続くらいで飲みに行ったり(笑)。
岩本:そういう場はわざわざ新しく作らなくても、誰かの事務所とかでもいい。仰々しく「ここに集まりましょう」と言われると「そんなメンタルじゃない」という日もあると思うので。掲示板みたいなのに「今日誰か昼飯一緒に食べませんか?」って呼びかけたら、集まれる人で一緒にランチするとか。そのフットワークの軽さはフリーランスだからこそなせるワザで。そうやって意識的にでも定期的に人に会って行かないと、どんどん「個」に固まっていくんじゃないだろうかと。


−−確かにフリーランスの人って、忙しそうだし「時間に価値がある」ようになるから、個別に連絡するのが申し訳なくなる時があるので、そのくらいオープンで軽いお誘いだとありがたいかも。


宮本:起業家の方って、年一回の定例の集まりとかってあるんですか?企業だとそういうの山ほどありますよね?

−−あの名刺交換が繰り広げられる光景ですよね。でも、そういう形式ばった関係性が苦手な人が起業しているイメージもあります。

岩本:僕に至っては名刺を持ち歩いていないという(笑)。

山岸:だから“ビジネス”って感じじゃない方がいいですよね。「友達ができる」っていうくらいの感覚がいいと思う。気が合わない者同士でマッチングしても仕方ないですし。

リアルとネットの双方で、起業家たちの「お悩み共有」

森崎:リアルな場も良いですけど、SNSのDMからできる「お悩み相談」とか、ネット上の気軽なプラットフォームもあって良いのかも。リアルに会いに行くのが億劫な人もいるだろうし。はたらこう課のアカウントで「いまこういう質問来てます」みたいなのがネットワークの中で共有されたりとか。Facebookグループみたいな形でもいいし、インスタの質問箱みたいなのもいいかもしれません。

山岸:リアルな場とネットの場と、両方で連携し合ってやっていかないとね。今の時代どちらかだけって訳にはいかない。あと、Youtubeチャンネルとかで、簡単な番組してもいいかも。毎回いろんなゲストがやってくる「徹子の部屋」みたいなのとか(笑)。僕なんかはデスクワークやし、仕事中ラジオみたいに流して聞けるのがあるといいなぁ。
−−「お悩み相談」とありましたが、ちなみに皆さんが起業したての頃ってどんな悩みがありました?

山岸:それこそ確定申告とか…まず税務関係ですかね。僕は起業当初はITビジネスプラザ武蔵を拠点としていたので周りの人に聞くことができたけど、そうじゃなかったらかなり困っていたと思います。

森崎:あとは「Webサイト作りたいけど、誰に聞いたらいいんだろう」とかですかね。僕は何年か経ってから知り合いに作ってもらいましたが、いまだに誰に何をお願いできるとかあまり分からない。

−−確かに今ネットとかでも「簡単にWEBサイトつくれます!」って広告とか結構ありますけど、できれば身近にいる方にお願いできた方が意図もよく伝わるしだろうし、メリットも多そうですよね。

岩本:金沢に住んでる僕らでさえこんな感じだから、金沢に移住したての人の「わからなさ」ってすごいと思う。その人達の手引きになるのが「はたらこう課」だといいし、そういう人にこういう場があるよってプッシュする方法があるといいですよね。
宮本: 様々な補助金制度もあるんですが、それも知されていないという現状もあります。​​

山岸:起業を支援するためのお金の使い方として、「補助金」ってどうなんだろうと個人的には思うところもあって。そのお金がないとできない事業ってどうなんだろうとか。例えば同じ100万円なら、100万円分の仕事を発注してもらった方がいいんじゃないかと僕は思うんです。仕事として「活躍できる場」を設けてあげた方が、その人のレベルアップにも繋がるんじゃないかな。

森崎:ちなみに、はたらこう課の中で求人したりするのってアリなんですか?

宮本:仕事を紹介する分には、特に問題ないと思います。
森崎:だったら「こんなことできる人探してます」とか、サイト内で募集できるといいかもしれないですね。クラウドワークスの局所版というか。

岩本:それめっちゃいいですね。

森崎:はたらこう課で紹介されてる人たちの、まとまりっぷりを知ってもらうだけでも結構効果あるんじゃないんですかね。僕も「こういう人が金沢にいるんだ」って、はたらこう課を見てはじめて初めて知った人もいますし。それも「教科書を読む」とかっていう感じなくて、直感的に「楽しそう」って思えたらより良い。

個人事業主だけの「大就職説明会」!?

森崎:それでいうと「就職説明会」とかを、ここで大々的にやったら面白いかも。

山岸:それいいね!あえて規模デカめにってのがいい(笑)。

岩本:参加する若い子もいわゆる“意識高い子”だけじゃなくて、もっと「将来どうしよう」って漠然と思ってる子らがフラットこれる場所だといいし、その方が僕らも楽しい。
岩本:空気的に、「これ(起業)が普通なことなんやぞ」って思わせたい。これまで企業だけがやっていたことを、全部、個人事業主だけでやるという。

−−確かに学生が就職活動するときの「就職説明会」って、今思えば企業だけでしたよね。もっと色んな仕事や働き方、生き方の選択肢を知ってもらうきっかけになれば。

森崎:高校生とか、小学生にも来てほしい。

岩本:イメージでいうと「新竪コーヒー大作戦」のイベントとか、そんな感じですよね。あれって言うなれば個人事業主ブースの集まりであるわけで。それをお客さんは楽しみにしてやってくるし、お店の人達も楽しんでる。

山岸:楽しそう、っていうのがやっぱり大事だよね。こっちが「教える」とかじゃなくて、聞きたいことあれば何でも聞いてって。
岩本:逆にすごいディスられてヘコんだらどうしよう…。最近よく20代の子と仕事するんですけど、彼らがめちゃめちゃ面白いんですよ。もう感覚が違う。僕らが高圧的に支配されてきた世代だとしたら、彼らは何にも気を使わないし全く物怖じしない。触れてる情報量も違うし、何なら俺らよりちゃんとしてる。つまり勝てる要素が何もない(笑)。

森崎:もはや「若い人は悩んでいるんじゃないか」という前提すらおかしいのかも。我々が彼らに「教えてください」ってお願いしなきゃいけないくらいで。

山岸:「そんなんで大丈夫なんですか?」って心配されて、それを、はたらこう課に「お悩み投稿」するっていうね(笑)。

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(以上座談会より抜粋)

笑いありお悩トークありで、様々なアイディアが飛び交った第2回「はたらこう課」座談会。閉会後のホワイトボードには「それもう実現できちゃうんじゃない!?」という現実味と意義ある提案がずらり羅列されていました。
オンラインも良いけれど、やはり顔を合わせて会話すると、予期せぬ発想が生まれるもの。リアルで集まる大切さを改めて実感した回となりました。ちなみに、この中のアイディアのひとつは近日実現予定だそうで‥?今後の「はたらこう課」の展開にもご期待ください!
(取材:2022年9月/編集:柳田和佳奈)

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