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2024.10/10 Report

大学生が聞く 起業家インタビュー! ~先輩起業家たちが越えたそれぞれの壁とは~ vol.2

大学生・わかちゃんが聞く 起業家インタビュー! ~先輩起業家たちが越えたそれぞれの壁とは~

今年度のはたらこう課では、金沢市内の起業に挑戦する若者のコミュニティづくりのため、学生の目線で起業のリアルを聞き出すインタビュー企画を実施!金沢大学3年生(取材当時)若原さん(愛称:わかちゃん)が、金沢で「会いに行ける」起業家に突撃。各回テーマを設けて全3回のインタビューを行います!
インタビュアープロフィール わかちゃん
 金沢大学融合学域先導学類の若原です。大学ではインバウンド観光について学んでいます。起業にもともと興味があったことと、起業に踏み出すハードルは、人によって差があるように感じていたこともあり、本事業の受託先である株式会社ガクトラボで学生インターンを始めました。インタビューを通して、起業の壁に対する一つの解決策を見つけられればと思っています。現在金沢市で活躍されている起業家の先輩たちから自分の目で見て学んでいきます。

第2回のテーマは、
「学生・女性起業×社会課題解決」

第2回のテーマは「学生起業・女性起業×社会課題解決」です。
社会保険労務士として活躍するかたわら子ども食堂の運営も行う「R社会保険労務士事務所」代表・室田律子さんと、
金沢大学在学中にオーダーメードの花屋さんとして起業しただけでなく学生主体の任意団体「ユースの保健室」の運営にも励む小田波優矢さんに取材を申し込みました!
女性や学生という立場で起業をする上でのハードルや、社会課題解決の取り組みを行う理由をお聞きします!
R社会保険労務士事務所 代表 室田律子さん
石川県立金沢二水高等学校、京都産業大学経済学部卒。
介護用品の営業や化粧品のビューティアドバイザー等を経験し、2009年「有限会社アセット&ライフクリニック」にてファイナンシャル・プランナーとして所属。2010年社会保険労務士資格を取得、「北村労務会計事務所」入社。2019年5月「R社会保険労務士事務所」を開設。2016年に「NPO RコトRトコ」を立ち上げ、子ども食堂の活動にも取り組む。

HP https://www.r-sr.com
金沢大学融合学域先導学類4年 小田波優矢さん
石川県立金沢二水高等学校卒業後、金沢大学へ入学。
幼い頃から花や観葉植物が好きだったことから、観葉植物も扱う雑貨ショップの経験を経て、2024年に個人事業主として起業。現在はオーダーメードの花屋さんとして活動をする。また、金沢を拠点として、包括的性教育、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)についてのセッションの提供や啓発を中心に活動する学生主体の任意団体「ユースの保健室」の代表を務める。

HP https://youthclinic-kanazawa.studio.site

誰かを喜ばせたり感動させたりできるのは、
自分でやるからこそ得られる体験

わかちゃん 今回は金沢市桜町にある「R社会保険労務士事務所」にお邪魔しました。さっそくですが、インタビューに移りたいと思います。はじめにお二人が起業したきっかけを教えてください!

室田 両親が薬局を営んでおり、二人が働く姿を見ながら子どもながらに「自分は会社員には向いていないだろうな」と思っていたんです(笑)。親は薬剤師だったので「専門性を持って独立するといいよ」と教わってきました。

もともと料理とお酒が好きだったので、20代の頃に調理師免許と唎酒師の資格を取り、いざ起業して飲食店を開こうと思ったタイミングで夫が病気で倒れました。ファイナンシャル・プランナーの仕事をしていたこともあり、より専門性を身につけたいと思って社会保険労務士(社労士)の資格を取得しました。社労士の勉強をしたおかげで夫が利用することになる障害者に関する制度の知識を得ることができましたし、様々な制度を知ることでライフプランニングが立てることもできて自分自身が救われましたね。

小田波 僕は子どもの頃から花や観葉植物が大好きで「ならば大学生のうちにやるしかない!」と思って起業をしました。花屋さんでアルバイトをするのでも良かったのですが、自分が作るもので人が感動したり喜んでくれたりするというのは、自分自身でやっているからこそできる体験だと思うんです。今年(2024年)3月に個人事業主として開業届を出し、現在は大学に通いながらオーダーメードで花束を専門に手掛けています。

わかちゃん 室田さんは会社員経験を経て独立したということですが、起業にあたって不安はありませんでしたか?

室田 会社員時代は残業も多く、保育園のお迎えはいつも息子が最後か最後から2番目でした。仕事は充分やりがいがありましたが、働きながらの家事と育児の両立は本当に厳しかったです。息子は0歳から保育園に通っていたので、もっと子育てをしたかった私は、ちょうど夫が社会復帰をして家庭が落ち着いたこともあって起業を決心しました。なんとかなる!という根拠のない自信だけはあったので(笑)、そんなに不安はありませんでした。会社員という立場で様々な下積み経験をさせていただき、自信がついたのかもしれません。

「人は自分の人生の決定権の割合が大きければ大きいほど幸せになる」と聞いたことがあります。だから起業は楽しい。働き方も、服装も、全部自分で決めることができます。一方で自由度が高い分、全ての責任を負うのも自分です。それでも「自分で決めたことだし」と前向きに捉えられるのが自分でビジネスをする醍醐味ですね。

アルバイトという形で
業界に飛び込んでみるのもいいですね

わかちゃん 小田波さんは大学在学中に起業をされましたが、学生ならではの困難やハードルなどはあったのでしょうか。

小田波 多くの学生がイメージしている「起業」って、法人を作って融資を受けて、大きなビジネスにチャレンジするみたいなことだと思うんですよね。もちろんそれもスタートアップとしてはいいのですが、僕は小さい規模で始めようと思ったんです。個人事業主としての開業届を提出しに行ったときも、手続きが1分くらいで終わっちゃって(笑)、お金も特別かかりませんしハードルはありませんでしたね。

室田 起業に対してなかなか踏み出せない人も、学生であれば、アルバイトという形でその業界に入ってみることができますよね。私は10代の頃から興味がある分野はとりあえずアルバイトをするようにしていて、様々な業界を見るなかで、自分は人と接する仕事がしたいということに気付きました。その業界を深く知ったりお金やサービスについて学んだりすることもできるので、起業の前にアルバイトをしてみるのはいいと思います。

当事者ではない立場の僕が取り組まないと
って思ったんです。

わかちゃん 室田さんは社会保険労務士としてのお仕事、小田波さんはお花屋さんとして起業されている一方で、こども食堂やユースの保健室の取り組みも行っています。お二人が子どもや若者をターゲットにした社会課題解決の活動を始めたきっかけは何ですか。

室田 飲食店をする夢がどうしても捨てきれず、夫のことや家庭が落ち着いたタイミングで「社労士も飲食店もどっちもやろう!」と思ったのがきっかけです。いつかは飲食店をしたいと思っていたので、実は事務所を開くときにキッチンを作って食品衛生法に基づく許可も取っていました。世の中には飲食店はたくさんあるし社会保険労務士もたくさんいるなかで、飲食の「食」と職業の「職」、これを掛け合わせるというのが私の中ではイノベーションだったんです。

子ども食堂を始めるにあたっては、気軽に訪れてもらえるように「あそこに行ったらたくさん子どもがいて楽しい」と思ってもらえるような場所にするということ、食事を提供するだけでなく、子どもが色んな大人に出会ったり経験したりする機会の創出も意識しています。例えば茶道体験やマナー講座、プロカメラマンによるセミナーを実施するなど、大人も一緒に楽しめるような企画です。子どもたちが大きくなったときに「そういえばあんな体験をしたな」とか「子ども食堂に行ったな」という記憶が片隅にでも残ってくれたら、それでいいかなと思います。

小田波 僕が「ユースの保健室」を始めたのは、高校3年生の時から付き合っているパートナーの存在がきっかけです。彼女はめちゃくちゃ月経に悩んでいたんです。当時は生理のことがよくわからなくて「病院に行けばいいんじゃない」と軽い気持ちで言ってしまったのですが、話を聞くと、産婦人科へ行くことに対して若い女性は心的ハードルがあるとのこと。周囲の女性たちにもヒアリングをすると同じような声が上がって「これは解決しないといけない」と思いました。

「なぜ男性なのに女性の問題に取り組むんですか」と言われたこともあるのですが、女性が当事者同士でエンパワーすることはもちろん、男性も含めて大多数の方が支援してくれるような環境を作らないと絶対ダメだと思っていて。「ユースの保健室」では、ユースクリニックと呼ばれる、若い人たちが気軽に通える街の保健室として、生理を始めとした性に関する教育をしたり、避妊具や生理用品、緊急避妊薬を無償で提供したりできるようにしていきたいと思っています。また、企業などの組織に対して研修を行うこともしていきたいです。

いつか受けた支援を、
社会にお返しするような循環を作りたい

わかちゃん お二人が取り組む社会課題解決の取り組みについて、今後の展望についてもお聞きしたいです!

室田 私の夫が倒れたときは多くの人に援助していただいたおかげで生活することができたので、今度は私が社会にお返ししたいという気持ちが大前提にあります。子ども食堂を運営する上で大切にしているのは、すこしでも家族のサポートになれるように、ということ。 私たちの身の回りにも、多くの人にとって普通のことが当たり前じゃない家庭があるんです。全ては解決できないけれど、私が少しずつ啓発していくことで賛同してくれる人もいて、そんなつながりをちょっとずつ大きくしていけたらいいですね。「あのとき支えてもらったから、今度は自分が支えたい」と思う人が増えていき、それが循環していくと、より素晴らしい社会になれると思います。

小田波 性別に関わらずみんなが共に協力し合える関係や社会を作りたいですね。本来であれば男性側も変わらなきゃいけないのに、女性が立ち上がってがんばっているのが今の社会だと思うので、みんなが立ち上がってみんなで支援していけるようなきっかけ作りのようなことができればと思います。「ユースの保健室」はまだ拠点がないのですが、今後は拠点を作って、ちょっと年上の人が若者を支えるような仕組みを性の分野で作っていきたいです。

努力はちゃんと結果に出る。
失敗に対する不安は準備で解決を

わかちゃん 最後に起業を志す学生へのメッセージをお願いします!

小田波 実体験をお話しすると、まずは口に出すことが大事だと思います。ビジネスモデルとまでいかなくても、「こういう悩みがあって」とか「こういうことやってみたいんだよね」みたいなことを日頃から周囲の人に話していれば、アドバイスをしてもらえたり「こういうイベントあるから行ってみようよ!」って誘われたり、様々な刺激を受けることが起業につながることがあるので、ぜひ積極的に口に出していってもらえればと思います。

室田 最近の若い人は失敗が怖いとよく言いますが、突き詰めれば準備の量だと思います。私は起業したばかりの頃「人より抜きん出たかったら人よりも努力しないと」と思って、早朝5時から深夜24時まで、本当に一所懸命働いていました。これだけ頑張ったということが自信になりましたし、上手くいかなかったら「まだまだ足りなかったんだな」と思っていました。努力はちゃんと結果に出ます。楽して稼げる仕事はそうないし、何をどれだけ積み重ねてきたかというのは、見る人が見ればわかる。学生さんにはぜひ、どんどん色んな経験を重ねていただきたいと思います。

若原 お二人に会いたい学生や、相談したい学生はどのようにコンタクトを取ったら良いでしょうか?

小田波 InstagramやFacebookから気軽にメッセージください!

室田 基本的には事務所にいますし、起業の相談でしたら石川県地場産業センター内の「石川県産業創出支援機構(ISICO)」で「石川県よろず支援拠点コーディネーター」として起業支援も行っているので、ぜひ利用してください!あとは子ども食堂にお越しいただいてもいいですし、Facebookのメッセンジャーでも大丈夫ですよ。

わかちゃん 学生は0か100かで考えてしまう人が多いと思うのですが、お二人の話をお聞きしていると、アルバイトや会社員で経験を重ねて個人事業主になるなど、段階的にステップを踏んでいけるものなのだとわかりました。また室田さんがお話ししていたように、とりあえず業界に入ったりアルバイトをしたりして、チャンスを掴むというのもめちゃくちゃ大事だなと思いました!本日は本当にありがとうございました!


(2024年7月12日取材、編集:井上 奈那)

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