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2024.11/05 Report

大学生が聞く 起業家インタビュー! ~先輩起業家たちが越えたそれぞれの壁とは~ vol.3

大学生が聞く 起業家インタビュー! ~先輩起業家たちが越えたそれぞれの壁とは~

今年度のはたらこう課では、金沢市内の起業に挑戦する若者のコミュニティづくりのため、学生の目線で起業のリアルを聞き出すインタビュー企画を実施!今回は、東京通信大学1年生の古林愛夏さん(愛称:まなか)が、金沢で「会いに行ける」起業家に突撃。各回テーマを設けて全3回のインタビューを行います!
インタビュアープロフィール 古林愛夏さん
東京通信大学の古林です。起業に興味があり高校生の頃、金沢市主催のZERO→ICHI KANAZAWA U-18に参加し本事業の委託先である株式会社ガクトラボと出会いました。私は様々な活動を通して、起業家一人一人に違うストーリーがあることを知り、たくさんの人の起業したきっかけや考え方を聞くことが楽しいと感じるようになりました。インタビューを通してその楽しさをみなさまにも共有し、起業に踏み出すための勇気を与えることができたらと思います。

第3回のテーマは、
「グローバル×スタートアップ」

最終回となる今回は、日本を飛び出し世界で活躍するスタートアップ起業家のお二人に取材を申し込みました。
スタートアップとは未開の市場に挑戦し、イノベーションを通じて社会や人々の生活を変革する新規事業を立ち上げる企業や個人のこと。
「世界をエンタメ化する!」をキーワードに、約2000機所有する自社開発のドローンを使ってドローンショーを提供し、近年では北陸新幹線芦原温泉駅開業記念ドローンショーや大阪・関西万博の PRドローンショーなども行う、国内シェアナンバーワンの「ドローンショー・ジャパン」代表取締役・山本雄貴さんと、インパクト投資によって途上国の社会課題を解決するソーシャルスタートアップ「PADAYON(パダヨン)」の設立者であり「パダヨンジャパン株式会社」と「一般社団法人PADAYON」の両輪でフィリピンの課題解決に取り組んでいる後藤一平さんにインタビューを行いました。

株式会社ドローンショー・ジャパン 代表取締役 山本 雄貴さん
石川県金沢市出身、2006年東京工業大学を卒業後、「三井住友銀行」に入行。法人営業部で様々なM&Aに携わり24歳で独立。インターネットサービスを手掛ける会社を設立し、2010年に中国最大の検索エンジンを提供する「百度(バイドゥ)」に事業譲渡。その後、株式会社「オーケストラホールディングス」の取締役に就任し株式上場に携わる。2017年に退職し、準備期間を経て2020年、「株式会社ドローンショー・ジャパン」を設立。

HP https://droneshow.co.jp
パダヨンジャパン株式会社 代表取締役 後藤 一平さん
石川県金沢市出身。カラオケスナックから著作権使用料を徴収するアルバイトをきっかけに、中央大学大学院在学中にネットベンチャーを起業。コンテンツ制作支援として日本で初となる、ネット上でインディーズアーティストにファンが出資できるサービス「MUSIC FUND」を開発(現在のクラウドファンディングの原形となる)。その後、石川県にUターンし、2021年にインパクト投資によって途上国の社会課題を解決するソーシャルスタートアップ「PADAYON」を設立。「パダヨンジャパン株式会社」と「PADAYON」の両輪でフィリピンの課題解決に取り組む。「パダヨンジャパン株式会社」では、フィリピン・マニラ郊外で、立ち飲みできる酒販店「SAKAYA(サカヤ)」をチェーン展開している。石川フィリピン友好協会会長。

HP https://padayon.org

どう働くかは、自分の人生を
どう生きるかに直結する

まなか 人生を賭けて起業されたと思うのですが、スタートアップの「ここ、めっちゃおもろい!」ってところを教えてください。

後藤 誰かの会社に属するのではなく自分がやっている会社という意味で、仕事は自分の人生をいかに豊かに生きるかとか、いかに幸せに生きるかということに直結するので、とても刺激的だと思いますね。

山本 「株式会社ドローンショー・ジャパン」として「世界をエンタメ化する」というミッションを掲げているのですが、楽しいことをやりたいなっていうのはずっと自分の根本にあって、これまでの人生を振り返ってみても、それしかやってこなかったんですよね。そういった「自分はこれをやるために生きてきたんだ」というのが何かあるはずで、そこがカチッとハマると、会社って楽しいなって感じます。

まなか お二人とも自分の得意なことや特性を仕事に活かしている印象があったのですが、スキルはないけどやりたいことはある!という場合はどうしたら良いのでしょうか。

山本 スキルは無くってもいいんですよ。例えばあるドローンショーの案件があったとして、川に2階建ての台船を浮かべて屋根をドローンの発着場にする場合、1階部分で何かしたいと思ったとします。無人販売所があったらいいなというアイディアから後藤さんの「SAKAYA」を思い出し、一緒に何かできないかなと考える。本当に形にできるかどうかはわからないけど、目に入ったりとか情報としてキャッチしたりしたときに「これを使って何か面白いことができないかな」みたいなことはずっと考えていれば、必ずしも自分がスキルを持っている必要はなく、考えて、思い付いたことを行動できるかが重要なんですよね。

後藤 僕の座右の銘と言いますか、いつも自分に言い聞かせている言葉に「アクションには必ずリアクションがある」というものがあります。これは映画『告発』に出てくる有名なセリフなのですが、良いことも悪いことも全部含めて、リアクションが欲しければアクションするしかない。何か目標としていることをするために、日々どこに向かって行動しているか、ということこそ大切だと思います。

純粋な憧れや夢を大切に、
目的を持って行動する

まなか 私を含めて周りの大学生は様々なイベントやセミナーに参加しているのですが、いろんなことに手をつけすぎて、逆にどうしたらいいのかわからなくなっているような感じがします。お二人の話を聞きながら自分たちに足りないのは目的意識かなとか、「全部自分ひとりでやらないと」と考えすぎてしまっているのかなと考えたのですが、お二人はどう思われますか?

山本 夢とかどういう人になりたいだとか、純粋な憧れのようなものがあると、やりたいことが見えてくるかもしれないですよね。ただ無目的に交流会やビジネスマッチングに参加してもあまり意味がないと言うか、それ以前に「自分はこういったことをやりたい」というのがしっかりあって、それに対して「何か面白いことが起こりそうだな」という期待を持ってイベントに参加すると、また変わってくるのではないでしょうか。

後藤 僕は大学生時代のアルバイトがきっかけで大学院生の間にネットベンチャーを起業したのですが、大学生とか大学院生の名刺って最強で、上場企業の社長でも「会ってください!」ってお願いしたら大体一回は会ってもらえるんですよね。ネットベンチャーを起業する前に大手証券会社の社長に会ってビジネスアイディアをお話したところ「それなら自分でやってみたら」と背中を押された経験があります。みなさんも、学生というカードをフル活用したらいいのではないでしょうか。チャンスは平等にあって、どこにでも転がっているんです。その転がっているチャンスを自分で取るか取らないか、それだけだと思います。

まなか 「金沢未来のまち創造館」への入居を決めた理由は何でしょうか。

山本 素晴らしい設備に惹かれて、ということもありますが、東京から金沢に戻ってきて、街と繋がりを持ちたかったということもあります。僕が追い求めているエンタメは、もう少し発展させていったら施設づくりや、街づくりといったものになっていくと考えていて、その上で街とつながる起点にできたらいいなという思惑もありましたね。

後藤 僕は、山本さんのようなスタートアップの起業家と繋がりたくて入居しているところが大きいですね。僕が「PADAYON」を立ち上げたのは3年前なので、まだ金沢でスタートアップという言葉がそこまで浸透していなかったのですが、そんな中である程度の資金調達をして事業をスケールさせようとしてる同業者、話が会う人と交流したいという気持ちがありました。起業家って基本的に孤独なので、起業家同士だからこそ分かり合える悩みや相談できることもあるんですよ。

英語が上手に話せなくても、
気持ちを伝えようとする姿勢が大切

まなか グローバル展開をするなかで気になっているのが英語力ですが、お二人は英語をどれくらい話せるのでしょうか? また、英語のスキルはグローバル展開において必要ですか?

山本 最近、海外の企業ともやり取りすることが多くなってきたのですが、実は英語がすごく下手で、なんとかやっているというのが本音です(笑)。ただ、どれだけ同時通訳や翻訳機能が発展したとしても、言葉ではなく気持ちを伝えたいわけですから、ツールや通訳を使ったりすると、なんか上手くいかないんですよね。やっぱり、下手でもいいから自分の言葉で話した方がいいと思ったんです。下手でも伝えようという思いがあれば結構伝わります。要はコミュニケーションなんですよね。

後藤 僕も英語は大事だと思っています。中学校レベルの英会話で海外に乗り込んでいるのであまり大きいことは言えませんが、 例えばフィリピンの現地で部下に叱咤激励したいとか、「がんばったな」って労いたいときは、下手でも、ちゃんと自分の言葉で喋らないと伝わらないんですよね。ちなみにグローバル展開について補足しておくと、大きく分けて二つあります。一つは「株式会社ドローンショー・ジャパン」のように日本から始まって海外に進出すること。もう一つは、僕たちのように初めから海外の市場にチャレンジするボーン・グローバルというやり方です。それぞれに魅力がありますが、ボーン・グローバルの面白さはすごくありますよ。
まなか 今後、どのように会社を大きくしていかれる予定ですか。

山本 ドローンショーはたくさんのドローンを光らせて飛ばし、空に何かを描くから面白いんですよね。つまりコンテンツこそが大事だと思うんです。そう考えると、僕は必ずしもドローンにこだわる必要はないなと思っていて。僕たちの初めてのエンタメ装置としてドローンを開発したところから始まりましたが、例えば、めちゃくちゃすごい音響機器を作ったり、巨大なLEDパネルと連動したり、様々な手法でエンターテイメントの幅を広げていけたらいいなと思います。その上で譲れないものは、新しい技術を積極的に取り入れていくということと、ライブ(体験)であるということ。人々が熱狂するようなものを作ることで、人が移動するきっかけになり、そこで経済が生まれる起爆剤にしていけるんじゃないかと思っています。

後藤 最近、起業の分野でピュシスとロゴスという言葉を使う人が増えているのですが、ピュシスというのはありのままの自然や芯となるもの、ロゴスは言語化されたものや人間の思想を指します。僕の会社はスタートアップって言ってもまだまだ会社が小さいので、会社のピュシスはほとんど僕のピュシスのようなもの。僕の中には「ハッピータイムを届けたい」というピュシスがあるんですね。 フィリピンには酒屋がない。だから日本のような酒屋「SAKAYA」を作って、店内でお酒を飲めるようにしよう。そこで社会問題になっている路上飲みを解消していこうというビジネスを展開していますが、 お酒を売りたいというよりも、ハッピータイムを提供したいという思いが根底にあります。だから「SAKAYA」が成功すれば、次は「SAKAYA」ではないことをしていくと思いますが、ベースにあるフィリピンの一般層の人たちにハッピータイムを届けたいという気持ちは変わらないですね。
まなか 最後に、学生へメッセージをお願いします!

後藤 よく「ミッション・ビジョン・バリュー」を決めてから起業しようとか言いますが、僕はあまりその考え方が好きじゃなくて、たまたま今その経営手法が流行っているだけで、5年先にはどうなっているか分からないんですよね。ゼロからイチを作るときは、一人のことが多い。冒頭の話と少し被ってしまいますが、自分でやるからこそ、自分がどんなふうに人生を生きたいかを考えると、自然とやりたいこととか取り組むべきこと、自分の周りにある課題などが見えてくるような気がしますね。

山本 人生は長いようで短いんです。 人生が100年だとすると、そのうちの1年って1パーセントに相当するんですよね。1パーセントって結構多くないですか? 学生の1年も社会人の1年も同じ。時間は平等に与えられています。そう考えると、1秒足りとも無駄にはできないし、楽しむことに集中した方が良いと思うんですよね。自分は「何をするのが1番楽しいんだろう」ということを考えて、それが起業なのであれば起業すればいいし、特に何をしなくてはいけないという決まりはないので、本当に楽しいと思えることやったらいいと思っています。もう一つ、「他人に迷惑をかけてはいけない」という考えは、足かせになります。実は自分が思っているほど周りは迷惑だと思っていないかもしれないですし、「人に迷惑をかけたら」なんて気にするよりも、迷惑をかけたら素直に謝って、優しくしてもらったら素直に感謝して、それだけで十分な気がします。何でもやりたいことをできるようになるポイントとしては、周りにどう見られるかとか、自分が恥ずかしい思いをしたくないとか、そういった安っぽいプライドを捨てること。そうすれば心が軽くなると思います。

まなか ちなみに、お二人と話してみたい学生はどうやったら会うことができますか?

山本 少しでもお役に立てることがあれば、という思いは当然ありますが、都合が合わないこともあります。断られることを恐れずに、しつこく連絡してもらったらいいのではないでしょうか(笑)。

後藤 若い頃って、何かに5回挑戦したら5回とも上手くいかないとダメみたいに思うことが多い気がするんですけど、 僕らの感覚だと、10回やって1回でも上手くいったら「上手くいったな!」という感じなんですよね。つまり9回は誰かに怒られているか、迷惑をかけている。打たれ弱くあるのではなく、ちょっと嫌なことを言われたり失敗したりしたとしても「10分の1だな」くらいの気持ちで受け流せるようになると良いんじゃないかなと思います。

まなか 人生を長い目で考えて、今を頑張って生きるのが大事。それから、人には迷惑をかけても大丈夫だよというお話しがすごく響きました!本日いただいたアドバイスを大切にして、頑張っていきます!ありがとうございました。


(2024年8月7日取材、編集:井上 奈那)

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