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2026.02/05 Report

大学生が聞く 起業家インタビュー! ~起業のリアルを聞いてみた~ vol.4

大学生が聞く 起業家インタビュー!~起業のリアルを聞いてみた~

はたらこう課では、2024年度から学生目線の起業家インタビュー企画をスタート。学生や若者をはじめ幅広い世代からの好評を受け、今年度も引き続き実施することとなりました!金沢市内での起業に挑戦する若者のコミュニティづくりのため、現役の学生が起業のリアルを聞き出します!
今回は、金沢大学3年生の細川心潤愛さん(愛称:しるく)が、金沢で「会いに行ける」起業家に突撃。

インタビュアープロフィール 細川心潤愛さん
金沢大学融合学域先導学類在籍。大学入学時から起業に興味があり、金沢市主催の「ZERO→ICHI KANAZAWA U-18」に参加したり、本事業の委託先である株式会社ガクトラボで起業支援に関わるインターンシップに参加したりしてきました。様々な起業支援事業に関わる中で、起業に興味・関心を持つ若者のうち、ハードルの高さからなかなかアクションに起こせない人の背中を押すような存在になりたいという目標を抱くようになりました。記事を読んだ方にとって、「一歩のきっかけ」になったらうれしいです。
季節おでんじゅん 店主 西村純也さん
1983年、金沢市出身。2003年大阪辻学園調理専門学校卒業。金沢市内を中心にイタリアン、フレンチ洋食レストラン、ホテルで修行。2015年、「合同会社斉家」に入社。
立ち上げから携わり、主にキッチンを担当(おでん場)。2021年、「ミシュランビブグルマン」掲載。「ゴ・エ・ミヨ」では「POP」を獲得。2022年5月に退職し、2022年7月に「とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO」にて自身の店をオープン。
株式会社Hibimichi 代表 川井恵梨佳さん(愛称:めありー)
1993年、アメリカ合衆国メリーランド州出身。出生3週間で日本に帰国。2016年管理栄養士国家資格取得。2018年 岡山県立大学大学院 修士課程修了。大学在学中にフードロス問題に興味を持つ。金沢市にUターンし、飲食店に就職。店長職や新店舗立ち上げも経験するが、体調を崩し退職。療養後、創作料理店などで修行しつつ、金沢中央卸売市場の青果仲卸に て青果の勉強を始める。2023年4月「ごはんとおやつとめありー。」を無店舗にて薬剤師の母と共に開始。2025年1月「株式会社Hibimichi」設立。2025年2月青果仲卸と連携して「やさいの おうち金沢」をオープン。

第1回のテーマは「飲食業」
お店を始めたきっかけとは?

第1回のテーマは「飲食業」。「現代版屋台村」として飲食店が集まる片町の「とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO」で、おでん店を営む「季節おでんじゅん」店主の西村純也さんと、金沢市中央卸売市場そばで野菜たっぷりの手作り弁当や惣菜、規格外などの野菜や果物を販売する「やさいのおうち金沢」店主のめありーさんにインタビューを行いました。

会場となったのは西村さんのお店です。仕込み中のおでんのおいしい出汁の香りが漂う店内で、カウンターを囲んでお話を伺いました。

しるく 本日はどうぞよろしくお願いします!まずは、お二人のお仕事内容を教えてください。

西村 仕事の内容としてはおでん屋さんですが、金沢市中心部にあるおでん屋さんって、飲食店であり観光業でもあると僕は思っていて。最近では9割のお客さんが県外や海外の方です。

めありー これまでお弁当や野菜を使った焼き菓子などを製造・販売する「ごはんとおやつめありー。」として、無店舗でイベント出店を主に活動してきました。2025年2月に金沢市中央卸売市場に「やさいのおうち金沢」というお店を構え、現在はそちらで営業しています。市場でロスになってしまうものや規格外のものを救うために、そのまま販売したり、加工したり、詰め放題など販売方法を工夫したりして消費者の方に届けています。

しるく 西村さんはどうして飲食の道に進んだのですか?

西村 高校生時代、同級生に誘われて大阪の調理師専門学校の体験入学へ行ったのがきっかけです。これまで様々な飲食店で経験をしていて。おでん屋さんを始めたのはちょうど30歳の時なのですが、それまではイタリアンやフレンチ、ラーメン屋さんでも少し働いたことがあります。職場の先輩が独立して立ち上げたピクルスのお店でお世話になったこともあるのですが、そのお店では「もったいない」の精神で、捨てられる野菜を活用していたので、めありーさんの話を聞きながら当時のことを思い出しました。

めありー 今まさにピクルス事業が動いています!みなさん瓶で販売していらっしゃいますが、同じことをしても面白くないので、パッケージはパウチにしようかなとか。まだまだ考え中ですが。

西村 金沢で製造されるこだわりのお酢を使ったり可愛らしいパッケージにしたり、めありーさん独自の視点を入れたら上手くいきそうですね!

「もったいない」精神から生まれた
規格外・ロス野菜を活かす取り組み

しるく めありーさんはなぜ野菜に着目したんですか?

めありー 私はもともとトマトも嫌いだし、しいたけも嫌いだし、野菜は全部嫌いみたいな感じで(笑)。でも、大学で管理栄養士の勉強をして栄養のことを学んでいくうちに「野菜ってめっちゃ大事じゃん!」って気づき、どんどん野菜も好きになっていきました。

大学在学中、野菜の価格がすごく高騰した年があって。私たちは学生だからお金がなくて野菜が買えない。一方で、農家さんからは規格外のレタスがたくさん出て捨てているという話をお聞きして、ものすごくジレンマだなと。ロス野菜をどうにか消費者につなげられるような事業ができないかと思ったのが、今につながっています。

しるく 県外の大学で学ばれたそうですが、Uターンの理由は何ですか?

めありー 高校時代から自分は将来カフェを開くだろうと漠然と感じていて。母にそのことを伝えたら「お母さんも老後お店とかをできたらと思っていた」と言われたんです。そのときから「私はきっと将来的に母とお店をするんだな」と考えていました。なので、卒業後に地元へ帰ってきたのは自然な流れでしたね。

ストリートで、おでんを
求める人に届けたい

しるく 西村さんが金沢でおでん屋さんを開こうと思ったのには、何かきっかけがあったのですか?

西村 イタリアンとフレンチのお店を辞めて先輩と一緒におでん屋さんを始めたのが2015年のとき。新幹線の開業効果で金沢市中心部が年々賑わっていました。おでんは金沢市民のソウルフードとして地元のお客さんから愛されていたんですが、観光客が押し寄せたことにより、老舗のおでん屋さんが連日どこも行列で、気軽に入れなくなってしまったんです。

そんななか、当時僕が働いていたお店に、あるカップルが来店されました。冬の寒い日で、彼氏さんが「どのお店も断られてしまって、持ち帰りで良いから、彼女のためにおでんを食べさせてもらえませんか」って。でも、そのお店ではテイクアウトは対応していなかったから、断ってしまった。こんなに温かいおでんを作っていて、やってることはめっちゃ冷たい。「これは僕の求めているおでんじゃない」と。それで、独立して、ストリートでおでんを求めている人たちに届けたいなと思ったのが独立のきっかけです。

しるく 金沢にはおでん屋がたくさんありますが、そこに新規参入するのは不安ではなかったですか?

西村 僕が和食出身の料理人だったら怖いと思ったかもしれません。でもイタリアンやフレンチを作ってきたので、自分たちの持ち味を活かそうみたいな気持ちが大きかったですね。茶色っぽくなりがちなおでんを、立体的に、見栄えも良く盛りつけるんです。洋食で培った色彩感覚などがあったから、これまでのおでん屋さんにはない強みがあると思っていたし、新規参入するときにもワクワク、早く世に出たいと思っていましたね。

しるく めっちゃ起業家だ! めありーさんは資金面での不安やつまずくことへの恐怖などはありましたか?

めありー 心配性なので、あんなことが起きたらどうしようとか不安になって頭でっかちになってしまい、なかなか始められないというのはありました。

春巻き専門店「はるまき家」さんの立ち上げに関わらせてもらったのは大きかったですね。起業された方の意見を聞く機会を全然作って来なかったので、店主の佐藤大輔さんからどのように起業されたかなど生の声を聞くことができて、なんとなくイメージができたので、「私もやってみようかな」と。

しるく テイクアウトがメインなんですか?

めありー はじめはお菓子だけで、お弁当やおやきは作っていませんでした。ですが、焼き菓子を作っている人はたくさんいる。差別化するにはどうしたら良いだろうと考えたときに、野菜を使ったお菓子を作ろうと思ったんです。実際に野菜を使ったお菓子を作ってみると、あまり野菜を消費しないことがわかりました。そこでスタートしたのがおやきです。

しるく 大切にしていることはありますか?

めありー お店を始めるとき思ったのは、母と一緒にやるからには、「やりたい」と言われたことはなるべく形にしようということ。母からどうしてもお弁当を作りたいと言われたとき、テイクアウトビジネスはすごく発展しているから、今から新規参入は難しいよという話しをしたのですが、やっぱり、母がやってみたいと言うならやってみるかと。

私は管理栄養士、母は薬剤師の資格を持っているので、栄養バランスもしっかり考えられている、彩りの良いお弁当というのを売りにしています。
しるく 西村さんは独立にあたって、「とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO」に出店する形でスタートを切りました。

西村 自分の店を開くにあたって片町や木倉町周辺で物件を探していたのですが、ほとんど空きがなかったんです。そんななか、ここの物件を見つけて。「とおりゃんせ KANAZAWA FOODLABO」だったら、既にカウンターがあって、共用のトイレやグリーストラップがあって、換気扇もあって、業務用の冷蔵庫まで付いている。飲食業でゼロから準備しようと思ったら冗談抜きで1000万円くらいかかるところを、ここであれば200、300万円ほどで始めることができるんです。

この辺りの飲食店はレベル99の猛者しかいないので、猛者たちと勝負しようと思ったら、ある程度装備を強くしないとお客さんに納得していただくことができない。僕は7年間おでん屋さんで働いた経験があったから、この最低限の装備さえあれば、あとはトークで上手く対応できるかなと(笑)

しるく 金沢で仕事をする面白さとは何ですか?

西村 金沢って、関東や関西、さらに名古屋方面からも片道3時間ぐらいで来ることができる、とてつもなく魅力ある土地なんですよ。それでいて東京に比べて家賃が安いから、中心部にはどんどん飲食店が増えていますよね。まだまだ金沢を訪れたり移住したりする人はたくさんいて、経済に伸びしろがあるんです。そんな町の中心部で観光客向けの商売をするって、めちゃくちゃチャンスだと感じています。

「食」の提供だけでなく
コミュニケーションに価値を込める

しるく 西村さんは主に観光客向けに、めありーさんは地元の方向けにビジネスをしています。地元の方を相手に仕事をする上でのやりがいや、難しさはありますか?

めありー 店をしていて思うのは、みなさん財布の紐が固いなということ(笑)。でも、県民性なのか市民性なのかわからないですけど、美味しいものとか「ストーリー」のあるものについては、皆さん惜しまずにお金を使うんですよね。

財布の紐に限らず、みなさんが緩むことができるような場所を作りたいというのがあって。来店される方の中には日々の仕事や子育てに追われている方も多いのですが、「おしゃべりしに来た」とか「会いに来ました」と言ってくれる方もいるんです。

最近では「子育てで悩んでいる」という方がいらっしゃって、子育て経験のある母がお話をさせていただいたこともあります。「ちょっと相談乗ってほしい」とか「聞いてほしい」という窓口になるのもありだなと思って。ある方から頂いた言葉なのですが「食の薬局」みたいなところを目指していければと。

しるく 西村さんは「こういう場所(店)になりたい」みたいなものはありますか?

西村 先ほどお話したカップルの話もそうですが、お客さんと接しながら、思い出の1ページに残る仕事なんだなと思うことがありますね。おでんを提供しているだけなのに、すごく感謝していただける。これだけ人から「ありがとう」って言ってもらえることって、これまでありませんでした。だからこそ、来店されたお客さんに「楽しかったな」と思っていただけたら嬉しいですね。

先輩たちから起業を志す若者へ
実体験に基づくメッセージ

しるく 最後に、起業を目指しているけれど何から始めたら良いかわからない学生がアクションを起こす一歩になるようなメッセージやエール、アドバイスをお願いします!

めありー 私の体験談で言うと、まずは起業をした人のリアルな声を聞きにいったら良いかなと思います。やっぱり、生の声って一番響くんですよね。私はありがたいことに「はるまき家」さんの立ち上げに関わらせていただいたので、間近でしんどいときや上手くいく様子を見ることができました。近くにそういう先輩がいると、すごく心強いかなと思います。

西村 めありーさんとは真逆のことを言ってしまうのですが(笑)、起業しようと思ったら自分を信じろ!ただ、それだけです。自分のことを大事に思う人がいればいるほど、ドリームキラーではないけれど、親とか周りの人から心配されたり止められたりします。けれど、それらを全部投げ倒して孤立を選ぶことによって、道は開けます。

起業家って絶対孤独になる瞬間があって、周囲の人たちに耳を傾ければ傾けるほど正解がわからなくなります。で、最初はやっぱり上手くいかないんですよ。トライアンドエラーをひたすら繰り返しながら、ひたすら自分と向き合ってやっていった結果、少しずつ道が見えてくるものです。

しるく すごく良いお話がお聞きできて勉強になりました!ありがとうございました。

(2025年10月28日取材、編集:井上奈那)