はたらこう課

NEWS

ニュース

2018.05/23 Report

コアキナイ塾 vol.4

コアキナイ塾vol.4 REPORT

平成に入って初めての大雪もようやく落ち着いた2018年2月28日。
金沢市の起業支援プロジェクト”はたらこう課”から生まれた新しい集いの場、「コアキナイ塾」がいよいよ最終回を迎えます!

当日は雨でしたが、市内だけでなく市外からもたくさんの方にお集まりいただきました。
会場は、平成29年4月に竪町通りにオープンした文化服装学院の新校舎(竪町校舎)の2F、「ハルモニー」にて開催されました。最終回ということもあってか(?)みなさん、少し緊張気味のスタート。
早速、最終回のテーマ発表!と行く前に少し今までのことをおさらいです。
過去3回、様々な先輩起業家たちの起業ストーリーを聞く中で、「自分も起業してみたい」「起業に向けた意欲がさらに高まった」と、気持ちを新たにする起業家の卵たちが増えてきました。しかし同時に「自分の考えている起業が、本当に実現可能なのだろうか?」と、なかなか次の一歩が出ない…という参加者も。

自分らしいスタイルで、身近な人たちを幸せにできるのが、起業の魅力のひとつ。しかし、自分らしい起業といえど、自分だけで完結するビジネスはどこにもありません。まちに根付く文化や歴史、まちの風土、まちに暮らす人、まちを訪れる人などなど、たくさんの要素が絡みあってはじめて、ビジネスのシーズやニーズが生まれてくるものです。

そこで、参加者のみなさんが思い描く、”自分らしい起業スタイル”について、フォーカス。
自分の起業に必要な要素はなにか?を整理していったらどうだろう?意外とそれって、案外おろそかにしてしまいがちな部分だったりするのです。

そこで、最後を飾るコアキナイ塾のテーマはこちら!

身の丈サイズから、欲しい未来をつくっていく。
「あなた」だからできる、ナリワイの見つけ方。

今回は、岐阜県の飛騨古川という地方(田舎)に光を当て、古い町並みや里山を巡るサイクリングツアー『SATOYAMA EXPERIENCE』を立ち上げた、山田拓さんをゲストにお迎えし、どのように自分にしかできない起業へ辿りついたのか、その裏話にせまっていきましょう!

そもそも、なんで地方で起業しようと思ったんですか?

山田さんは、IBMで多くのグローバル企業の企業変革支援に従事したのち、退職。岐阜県・飛騨古川に移住し、古民家を滞在型オフィスに転用した「飛騨里山オフィス」などを設立。『SATOYAMA EXPERIENCE』をプロデュース。なぜ、あえて地方で起業しようと思ったのか、それまでの経緯が気になるところです。

山田)30歳で人生をいったんリセットしようと、かねてから妻と話していました。帰国後に転職したコンサル会社を29歳で退職し、新婚旅行もかねて2人で世界に出たんです。 南米やアフリカなど28カ国を訪れ、大自然や小さな村での生活を満喫しました。525日の旅の半分はテントで寝泊まりして、最も長く滞在した南アフリカでは、馬に乗って、車の入れない小さな集落をめぐる2泊3日のツアーに参加したのは大きく影響しています。観光地では絶対に体験できないような、自然と共存しながら暮らす地元の人々に接することができた。旅で一番心に残るのは、ローカルの暮らしを知り、触れ合うことであるということ。今までは旅人として楽しませてもらったことを今度は提供しよう、と思い立った事が、のちのSATOYAMA EXPERIENCE』に繋がったんだと思いますね。

—名前だけは聞いたことがあった『SATOYAMA EXPERIENCE』。飛騨は去年の大ヒット映画「君の名は。」の舞台になった土地ともあり、豊かな自然が多い。気になるその事業内容とは、一体どんなものなんでしょう。
山田)飛騨を訪れる観光客に自転車を貸し出し、ガイドツアーをサイクリングでやる事業です。
自転車に乗って、進んで、また乗って、進んで、季節ごとの飛騨の美しさを堪能しながら、経験を積んだガイドが日々の暮らしから歴史まで丁寧に説明してくれる。旅先で人がすることといえば、基本「食う」「寝る」ですが、『SATOYAMA EXPERIENCE』は、それらにプラスして「体験」があるのが売りです。

なぜ、自転車に注目したのだろう?とずっと気になっていましたが、最初から特別自転車にこだわっていたわけではなかったそう。

山田)休日だからといって肉体を休めるのも大事だけど、あえて使う事で肉体的にも精神的にもリフレッシュできたりする。あと、なんとなく自転車ってキャッチーだしホットだし、単価がとれやすいんですよね。

たしかに、旅先だからこそ、あえて自転車に乗ってみたくなる気持ちはよーく分かります。
旅先での思い出を共有するツールとして、自転車は身近かつ手頃。とても理にかなっているなと思いました。
今、お客様は外国人が8割を占めているようで、中でも欧米の方が多く、満足度も99.4%とかなり高いようです!着々と増え続けていますね。

さて、どうやって起業していくのか?

山田さんのお話のあと、参加者全員とのワークショップがありました。
今は別の仕事をしている人から、もうすでに起業して動き始めている人までいろいろな方がいました。
ワークショップの内容は、今やろうとしてる事業、内容、ターゲット、どのくらい資金が必要かを参加者が山田さんに具体的な起業プランを発表するというもの。みなさんそれぞれ独創的で面白い事業を考えていて、感心していました。
しかし、参加者の一人が「ディープなことが好きな独身女性がターゲットで…」と言うと、「ディープって?」「どこに住んでる人?」「どんなことに興味がある人?」と山田さんはどんどんつっこんでいきます。ここではじめて、参加者たちも「自分の穴」に気づいていきます。

ワークショップで、山田さんが共通して全員に問いかけているのは価値の見出し方、作り方でした。
起業し、どうやったら自分たちが選ばれるのかを考える上で、自分の持っているものは何なのか、他の人とどう違うのかを明確にしておくことは重要な第一歩だからです。

山田)実際、新規顧客をゲットするのはとても大変な事で、SNSも激戦状態ですよね。つい、サイトを立ち上げて、そこにリッチなコンテンツを詰めこもう!と思いがちですが、SNSを使って拡散するそこにかなりのお金を使う必要が出てきます。だから、そこに投資するお金は必要最低限でいいんじゃないかなと思ってるんですよ。資源、人材の使い方はその次で、まず軸ぶれないようにしておくことがよっぽど大事です。

起業するって、とても不安ですよね。何かやりたいとは感じつつも、結果がすぐに出るわけでもなく、先が見えるわけでもありません。このセミナーに参加してみて、まずは自分を信じてみることが大事なんだとよく思いました。

山田さんが話していた中で、印象に残った言葉があります。「企業に勤めることは点滴を打たれてるようなもの。でも「小商い」があると、自分はとてもラクになる。」

まず、自分自身が自立する。
自分が正しいと感じた方向で、その直感を信じてやり続ければ、必ず結果は見えてくる。一人一人がこんな意識を持てたら、社会はもっと豊かになり、自然と働き方も変わってくるのではないかと思いました。

今まで全4回コアキナイ塾に参加してくださったみなさま、本当にありがとうございました!
みなさまの起業が成功することを、心から願っております。
そして、またどこかでお会いしましょう!

文:太田 悠輝子(Hotchkiss)

Category