2023.07/27 Report
はたらこう課 座談会 vol.3
金沢はもっと面白くなる、絶対に。
“多様性のある働き方”を探れ!
春うらら、街中を彩る桜が満開を迎えようとしていた3月28日、金沢市幸町のシェアアトリエで「はたらこう課座談会」を開催しました。金沢市を拠点に活動する起業家のホンネが飛び交う座談会も今回で3回目。東京と石川での2拠点生活を経て白山市に移住した(株)吉田酒造店・吉田麻莉絵さんをゲストに、クリエイターたちがざっくばらんに語り合いながら夜はどんどんふけていきました。「どうすればもっと起業を後押しできる⁉」「こんな活動ができたらいいんじゃない」・・・。いろいろな意見やアイデアにあふれた座談会の様子をレポートします。
「ふと見上げた空が広かった」。
日常にあふれる豊かさがプラスに
今回の座談会テーマは「多様性のある働き方」。ゲストの吉田さんが経験した2拠点生活はまさに、そんな働き方の一例と言えるでしょう。吉田さんが東京と石川を行き来する生活が始まったのは、約5年前のことです。きっかけは、「手取川」のブランドで知られる1870年創業の老舗蔵元・吉田酒造店の7代目となる吉田泰之さんとの結婚でした。当時、吉田さんはエディターとして雑誌や広報媒体の編集を手がけており、酒蔵に嫁いだのを機に日本酒のラベル制作や同社の広報展開も担うようになりました。
「東京にも石川にも住まいがあり、週に2回、往復する生活が2年ほど続きました」(吉田さん)
北陸新幹線を使えば東京-金沢間は約2時間半。アクセスのよさが2拠点での働き方を大きく後押ししました。さらに、石川で働き始めたことで、得られたメリットも大きいと言います。その一つが何気ない日常にあふれる暮らしの豊かさでした。「金沢21世紀美術館近くを歩いていた時でした。東京の仕事先からトラブルの電話がかかってきたんです」と、吉田さんはある日の出来事を思い出します。「電話を切った後、ふと見上げると、街中にも関わらず、青空が一面に広がっていました。すぐに気持ちも晴れました(笑)。ビルのすき間にちらりとのぞくだけの東京の空ではこうはいきません」
「東京にも石川にも住まいがあり、週に2回、往復する生活が2年ほど続きました」(吉田さん)
北陸新幹線を使えば東京-金沢間は約2時間半。アクセスのよさが2拠点での働き方を大きく後押ししました。さらに、石川で働き始めたことで、得られたメリットも大きいと言います。その一つが何気ない日常にあふれる暮らしの豊かさでした。「金沢21世紀美術館近くを歩いていた時でした。東京の仕事先からトラブルの電話がかかってきたんです」と、吉田さんはある日の出来事を思い出します。「電話を切った後、ふと見上げると、街中にも関わらず、青空が一面に広がっていました。すぐに気持ちも晴れました(笑)。ビルのすき間にちらりとのぞくだけの東京の空ではこうはいきません」
参加者には進学や就職で東京での生活を経験している人も多く、そんな吉田さんの意見に大きくうなずきます。「自転車で街中を走っているだけで、金沢の街にはきれいな景色がいくつも見つかります。東京に出たことで、石川の魅力に気づけました」「渋谷のスクランブルを歩くと、自分は大勢いるうちの1人に過ぎないと感じるんです。自己肯定感が低くなるというか・・・。その点、石川ならば自身の存在を実感できます」。四季の移ろいを映す街並みと程よい街の規模感が、仕事と向き合う上でもプラスに働いているようです。「時間の流れも違います。朝に起き、夜は眠るというちゃんとした生活のサイクルが築けています」。吉田さんは笑顔で教えてくれました。
留学生と暮らす学生寮を街中に。
国籍も年齢も超えて人が集まる金沢へ
一方で、“多様性”の視点でいえば、国内だけでなく海外からも人が集まる東京は、世界的に見ても魅力ある都市の一つと言えるでしょう。「足を運べば、やはり刺激をもらえます。人と話していても、手がける仕事や考え方が面白く、とても参考になりますね」と話すのは、ウェディングや動画撮影などでヘアメイクを手がける角谷美由紀さん。吉田さんも、「お酒を飲んでいて、たまたま居合わせた人と意気投合し、そこから仕事へとつながっていったこともあります」とのことで、多種多様な業種・業界の人たちとの交流が新たなビジネスとして芽吹くことも少なくありません。
このように人が集まる街づくりは、新たなビジネスプランを創出するうえでも、地域に活力を吹き込むためにも欠かせないキーワードになりそうです。そのためのアイデアとして、参加者の一人で、ホテル「LINNAS Kanazawa」(金沢市尾張町)を運営する松下秋裕さんが提案したのが「国際学生寮」です。松下さんは学生時代、北ヨーロッパのエストニアに留学しており、この時、友人が暮らしていた学生寮ではローカル1人、外国人3人の合計4人で一つのキッチンを共有していました。「よく遊びに行っていたのですが、そこに暮らすみんなが本当に楽しそうで。国籍に関係なく、交流を深められる居心地のいい空間でした。同様の居住スペースを金沢の街なかにつくってはどうでしょうか」と松下さん。高等教育機関が集積する金沢は国内有数の“学都”です。その特色を生かし、日本人学生と留学生がシェアメイトとなる学生寮を、空洞化が懸念される市中心部につくることを提案しました。この国際学生寮のような交流拠点を核に、幅広い世代や国籍、職業の人たちの交流を深める場を整備することが、多様性のある働き方を促すうえでも重要なポイントと言えそうです。
このように人が集まる街づくりは、新たなビジネスプランを創出するうえでも、地域に活力を吹き込むためにも欠かせないキーワードになりそうです。そのためのアイデアとして、参加者の一人で、ホテル「LINNAS Kanazawa」(金沢市尾張町)を運営する松下秋裕さんが提案したのが「国際学生寮」です。松下さんは学生時代、北ヨーロッパのエストニアに留学しており、この時、友人が暮らしていた学生寮ではローカル1人、外国人3人の合計4人で一つのキッチンを共有していました。「よく遊びに行っていたのですが、そこに暮らすみんなが本当に楽しそうで。国籍に関係なく、交流を深められる居心地のいい空間でした。同様の居住スペースを金沢の街なかにつくってはどうでしょうか」と松下さん。高等教育機関が集積する金沢は国内有数の“学都”です。その特色を生かし、日本人学生と留学生がシェアメイトとなる学生寮を、空洞化が懸念される市中心部につくることを提案しました。この国際学生寮のような交流拠点を核に、幅広い世代や国籍、職業の人たちの交流を深める場を整備することが、多様性のある働き方を促すうえでも重要なポイントと言えそうです。
商店街の空き店舗や廃校の活用など
新たな視点で起業サポートを
ちなみに、今回、座談会スペースとして使わせていただいたのは、オーダーメイドのウェディングドレスを手がける木谷さやかさん、アクセサリーの制作・販売を担う上田祐美さん、角谷さんの3人で利用しているシェアアトリエです。「最初はアパートでの起業も考えていました。ただ、お客様に訪れていただくことを考えると、それではなかなか難しい。販売や制作場所としても利用できるアトリエがたまたま見つかり、3人でシェアすることにしました」。上田さんがこう振り返るように、起業する際、悩みのタネとなるのが活動スペースについてです。「コワーキングスペースも増えていますが、私たちのような仕事の場合、ある程度の広さが必要になります。加えて、大規模なイベントだけでなく、個人の事業者がちょっとしたイベントを実施できる場所もあるとうれしいですね」と、木谷さんも話します。
そんな課題に対して、全国に目を向ければさまざまな先進事例が見つかります。上田さんによると、岐阜市では商店街の空き店舗を活用した取り組みが活発に進められています。「市と商店街が力を合わせ、空き店舗を安価で貸し出しています。クリエイターも多く入居し、元気がなくなりかけていた商店街のにぎわいづくりに一役買っています」とのことで、創業支援への取り組みが地域活性化にもつながっています。ほかにも、児童・生徒数の減少に伴い、廃校となった学校を活用した取り組み事例などがあります。
金沢市でも起業家の第一歩を後押しするため、ITビジネスプラザ武蔵(武蔵町)に創業間もない事業者が入居できるインキュベーションスペースを用意。ビジネスの相談に乗ったり、交流スペースでマッチングを図ったりと、ハード・ソフトの両面からサポートしています。もちろん、起業家の皆さんを後押しするために、はたらこう課でできることはまだまだたくさんあるはずです。金沢に拠点を置く起業家やクリエイターをつなぐはたらこう課ネットワークを生かし、いかにビジネスチャンスを広げていくか――。座談会を通して見えてきた課題の解決にもますます積極的に取り組んでいきます。皆さんのご意見もぜひ聞かせてください。
金沢市でも起業家の第一歩を後押しするため、ITビジネスプラザ武蔵(武蔵町)に創業間もない事業者が入居できるインキュベーションスペースを用意。ビジネスの相談に乗ったり、交流スペースでマッチングを図ったりと、ハード・ソフトの両面からサポートしています。もちろん、起業家の皆さんを後押しするために、はたらこう課でできることはまだまだたくさんあるはずです。金沢に拠点を置く起業家やクリエイターをつなぐはたらこう課ネットワークを生かし、いかにビジネスチャンスを広げていくか――。座談会を通して見えてきた課題の解決にもますます積極的に取り組んでいきます。皆さんのご意見もぜひ聞かせてください。
(取材:2023年3月 撮影・編集:大廣涼)