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2024.03/09 Report

はたらこう課 座談会 vol.4

金沢の起業家として、いま考えていること・思っていることを話そう

はたらこう課に参加している人たちがつながる場として実施している「はたらこう課座談会」。不定期開催・テーマもさまざまというゆるい回ですが、熱い志を持った起業家たちが集まればたちまち議論は白熱。第4回の開催にあたり起業家のみなさんにお声がけしたところ「(株) 継手意匠店」の岩本守雅さん、「lecture de minuit」の木谷さやかさん、「CENDO」の森﨑和宏さん、「山岸浩也デザイン室」の山岸浩也さんが参加してくださり、フリースタイルながら今回も充実した内容になりました。2023年11月末に金沢市内で行った様子をレポートします。

ーーテーマは「これから考えている事業について話そうの会」。自己紹介とこれから考えている事業についてそれぞれお話しいただきます。それでは岩本さんからお願いします!

個人が育っていくことが理想

経って悩みもなくなり一人で事業を行うことに。すると身軽になり、これまでは設計を軸に仕事をしてきたのが、設計をするにあたって「なぜこの事業が必要なのか」「なぜこの家が必要なのか」ということをクライアントに対して問うことの重要性を改めて感じるようになりました。

お客様のビジョンが明確な状態でない段階で、丁寧にヒアリングをして結果に導いていく。クライアントの思考の整理をした上で動き始めるというような形で、それに伴いアウトプットも変わり、グラフィックデザイナーやライターなど外部の人材を紹介するような案件も出てきました。自分が建築家として入るというよりも、もっと俯瞰した立場から事業を眺めて、言葉にならない悩みを整理していく、そこに必要なことは何かを見極めてアウトプットにつなげることが近年力を入れていることです。最近手がけたプロジェクトには七尾自動車学校に併設する交流施設「TADAIMA」があります。

今後取り組んでいきたい事業が、PH(Playable House)という取り組みです。家を建てて終わりではなくて、ライフスタイルそのものをデザインする。例えばその人が好きなもの、感性に合った家具を提案したり、好みに合う車を探したり。ライフスタイルに必要な付加価値を提供する、お客様に寄り添うことを事業にできたらいいなと思います。

ーーもう少しこういう人材がいたらいいなとか、そういうことはありますか?

岩本:仲間を組織化することはあまり考えていないですね。個人が育っていけばプロジェクトごとにチームは組めるので、組織ありきというよりも、プロジェクトごとにちゃんとしたチームを作ることができれば良いと思っていて。個の集合体が理想なので、例えば「はたらこう課」のような起業家が増えるということは、ぼくは大賛成だし、自信を持って世に出ていく若者やったり移住者やったりが増えるとなお良いよね、と思います。

継続して関わっていくために

森﨑:映像作家・映像監督として17、18年くらい活動しています。独立してからは10、11年くらい。企業のPR動画や広告などを手掛けているんですけど、どうしても初めからゴールが定められていて、「いつまでにこういう目的で作ってほしい」というような単発の仕事が多いんですよね。基本的にクリエイティブなものには締め切りがあるので仕方のないことではあるのですが、もう少しクライアントと長期的に関わるようなことができればいいなあと思うことがあります。

そう考えると、先ほど岩本さんが話していたように、クライアントが本当に必要としているのは映像なんだろうか、大きな予算を使って一つのアウトプットのクオリティを上げるというよりも、そもそもどんな効果を求めているのかをちゃんと考えた方がいいんじゃないのかってところに行き着くんですよね。

例えば僕の場合、クライアントが継続的にアウトプットするための写真や映像を、自前で簡単に作れるようにちょっとしたテクニックや撮り方とか教えてあげるみたいな、継続した関わり方がないかなとか。あとは僕よりももう少し若い世代に「写真も映像も、みんなが思っているよりハードル低いよ」ということを伝えられるようなワークショップも考えたりしています。

ーー映像もそうですし、グラフィックデザインもそうですけど、クリエイターの人たちは大多数が単発の仕事をしていると思うんですよね。本来であれば、それで十分に生きていけることが良いと思うのですが、社会が変わってきたことによって、単発の仕事だけでは生計を立てるのが難しい人も出てくる。そういう意味で、森﨑さんのような技術を持っている人に対して、社会が正しい理解をもって、リスペクトできるようにならないといけないと思います。これは仕事の発注者が大切にしないといけないポイントで、いま行政の仕事でも民間の仕事でも、広いことをまとめる人材が求められていますが、裾野を支えるクリエイターたちをちゃんと養っていく仕組みができた方が、より力強い街になっていくんじゃないかと思いました。

年齢を重ねてもドレスを着る機会を作るには?

木谷:ウェディングドレスや小物のデザイン、パターン、縫製、営業のすべてを自分で行っています。ドレスはオーダーメイドのほかレンタルもできます。今日はみなさんからアイデアをいただきたくて参加したのですが、ウエディングドレスってどんな人もだいたい一回しか着る機会がなくて、ドレスを作る過程ですごく濃いお付き合いになったとしても、また利用していただくことがないんです。そんななか、ウエディング以外でもお客様と継続してお付き合いしていける方法を探っていまして・・

山岸:還暦祝いなど記念日に旅行をする人もいると思うので、県外から観光で金沢に遊びにきた方にアプローチするのも良さそうですよね。

木谷:そうですね。観光ついでにドレスを着て記念撮影というご提案もできそうだなあと思っています!

森﨑:記念撮影という点では、写真のクオリティがすごく大事になってくる気がします。ドレスを着て写真を撮ったときの体験がすごく楽しかったりすると、その体験を発信してもらって、どんどん広がっていくんじゃないかと思います。

自分のなかに判断基準を作ること

山岸:僕はみなさんと同じように単発の仕事が基本なので、一つひとつやっていくっていうのと、そのなかでどうやって継続した仕事につなげていくかというところかな。継続するなかでクライアントと良い関係になっていけば、例えば一つ作ってみたら見えてくるものってあると思うので、「今度はこうしよう」「あれもやってみよう」という流れができればいいと思うけど、先方の担当者が変わったり色々なことがあったりするので、なかなか難しい(笑)。

ーークライアントの懐に入っていくノウハウみたいなものはあるのでしょうか。

山岸:グラフィックデザインの話だけしかしなかったら入りづらいと思うけど、仕事に限らずいろんな話をしているうちに、実は考えていることが近いってわかることもあるし、これはクリエイティブに限らないんだけど、とにかくいろんな人の話を聞いたり幅広い話をしたりするのは大切だと思う。人とのつながりのところやね。

ーー山岸さんは金沢にずっといて、それこそ街づくりの仕事もいろいろとやってきていらっしゃいますが、金沢の企業や行政の仕事をするなかで、この街でデザイナーとしてやっていく上で必要だと思うことはありますか?

山岸:改めて何がと聞かれると難しいなあ(笑)

岩本:客観的に見ていて思うのは、山ちゃん(山岸さん)に仕事が集まる理由って、もちろん山ちゃんがグラフィックデザインができるというのもあるけど、それ以前に「山ちゃんに何かやってほしい」というのが根底にある気がする。

山岸:自分のスタイルがどうというよりも、自分のなかでしっかりとした価値基準がちゃんとあれば、どんな依頼がきても提案できると思う。そのデザインを自分が好きか嫌いか、デザインとして良いか悪いかというのは、クライアントが判断すること。自分自身がどんなものを作りたいとか、こんな風に見せたいというこだわりは特にないし、ない方がデザインかなとは思いますね。

ーークライアントから求められるものに対して実直に、ということですね。一方で、何が好きかとか「こういう場合はこっちの方がいい」という価値観は自分のなかに持っていると。

山岸:そう。それをしようと思ったら、やっぱり普段からしっかり考えていないといけないよね。最低限の話やけど、最低限、自分のなかの判断基準や価値観があれば仕事はできる気がしています。
・・・とテーマが移り変わりながらもどんどん議論が深まるなか、定時を迎え、名残惜しさを感じつつ会は終了です。オブザーバーとして参加した金沢市経済局産業政策課主査・宮本敬介さんは「みなさんが金沢で活躍していらっしゃることを知れて、今後が楽しみだなって思いました」、多田翠さんからは「役所にいてはなかなか聞けないような話を聞けたので面白かったです!」とコメントをいただきました。

クライアントとの付き合い方から新規事業について、仕事をする上で大切にしていることなど話題は多岐に渡り、まだまだ話し足りない様子だったみなさん。次回の座談会に乞うご期待です!
(取材:2023年11月 撮影・編集:井上奈那)

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