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2019.01/16 Report

はたらこう課 INTERNSHIP vol.1 REPORT

はたらこう課 INTERNSHIP vol.1 REPORT

『継手意匠店』編

インターン生 伊藤 尭さん

福井県出身。金沢大学人間社会学域人文学類で日本史を専攻する4年生。「台所の近代化」をテーマに日本史と絡めて研究した卒業論文を制作中。卒業後は住設部門の企業に就職が決定している。実家がキッチンを扱う会社を営んでいることもあり、将来はオーダーメイドキッチンの会社を起業したいと考える。文部科学省の留学プログラムの人材にも採用され、アメリカでキッチンに関する実地調査を行った経験もある。

継手意匠店 岩本 守雅さん

兵庫県生まれ。金沢工業大学工学部建築学科卒業。施工図会社・建築のプロデュース会社、工務店を経て、’12年に独立し、設計事務所『株式会社 継手意匠店』を創業。’18年6月に6周年を迎えたのを機に新体制に。個とのつながりでいいものをつくり、つなぐことをデザインする会社を追求する。

12月11日(火) インターンシップ2日目

『TATEURICH!』の新築プロジェクトの施工について、『丸吾建設』との打ち合わせに同行。岩本さんは担当スタッフたちとともに、設計図を見ながら、OAフロアの配線や施工時の注意点・問題点などについて念入りに話し合う。その打ち合わせ内容に伊藤さんは熱心に耳を傾け、メモをとった。

「岩本さんは気さくに話してくれて、緊張せずにインターンシップをスタートさせることができました。一方、お客様との打ち合わせになると、途端に岩本さんはプロの表情に変わる様子が印象に残りました。とはいえ、打ち合わせでは専門用語が多く理解しにくく、まだまだ話についていくのすら難しいですね。でも何かしら出来るようになればと思って、とにかく一生懸命メモをとって、アシスタント役に徹しています」と伊藤さん。以前アメリカ留学を経験し、シリコンバレーに滞在したそう。アップル社やグーグル社は世界的に知られているが、たった1人で大企業のトップセールス並みの営業もこなすベンチャーが何百もあるのを知り、そのバイタリティに刺激を受け、会社は規模の大小が重要なのではないと実感。それゆえ、今回のインターンシップが特に興味のある住宅関係の起業家の仕事に触れられる魅力に惹かれ、応募のきっかけとなった。

インターン生を受け入れた岩本さんにとっても、企業の本社屋の建築設計は大きな仕事の一つ。「建築家が一方的に提案するだけのやり方じゃ面白くない。そこで働く社員皆さんのイメージを自由に出してもらって、その思いやストーリーを共有したい。だからこそミーティングはとっても大事。伊藤君にとって、まだ建築の専門的なことは理解するのは難しいでしょうが、後々あの時言っていたのはこういうことだったのかって分かってもらえればいいんです。それと、1人の会社だから、自分のワタワタしている姿も間近で見て、何かしら感じてもらえれば。逆に一連の仕事を体験してみて、どんなふうに思ったのか、自分がどんなふうに見られているのか聞きたいし、“実験”でもある。1人だとどうしても内向きになりがちなので、新しい風を入れつつ、自分の動きも振り返りたいし、伊藤君から教えてもらえることもあるんじゃないかと期待しているんです」。

12月18日(火) インターンシップ4日目

『継手意匠店』の事務所で岩本さんが図面やパースを作成する様子を見学する。一般的なインターンシップとは異なり、岩本さんが設計・パース作成などの仕事をしている間は、伊藤さんは自主的にその日の課題を設定して、情報収集や研究に励む自習スタイルをとる。

「気になったことはすぐに岩本さんに質問したり、議論したり。いつでも気軽にプロに学べる最高の環境です」と伊藤さん。この日は、「webデザイン」をテーマに各キッチンメーカーのホームページをチェックして比較。「どのメーカーのホームページも方向性が同じようで、製品はきれいに見えるが面白味がない。初めて見る人の直感に訴えかけるものはどんなものかを考えるほどに、webデザインの基本をきちんと勉強する必要があると感じました」。そこで後半のインターンシップでは「自分でデザインをする」ことを目標課題に決定した。

「こちらから何も指示しなくても、彼は自主的に考えて行動できるため、ストレスなく仕事ができます」と岩本さん。「デザインとは何かをしっかり掘り下げるべきですね。キッチンのデザイン一つにも、職人と表面的な見た目の話ぐらいはある程度できますが、自分が目指すべきデザインを理解してもらうためにはもっと入り込まなければ。理詰めだけではいいものはつくれません。人によって相応しいデザインは違いますし、その人その人の思いに寄り添うことが大切になってくる。そのためには、自分の中でデザインとは何かを拡張していってもらいたい。だから、このインターンシップ期間内に、伊藤君に何かのデザインを考えてもらい、作成したCGについてなぜこれをつくろうと思ったかを聞いてみたり、ディスカッションしたりするのが楽しみです」。

これまでのインターンシップを振り返って

伊藤 尭さん

「参加する前は、起業家が1人で営む事務所って実際どんな仕事をしているかわからず不安もありましたが、実際に参加してみるとお客様との打ち合わせがとても多いことに驚きました。僕が帰宅後にも設計などの作業をされていたことを知り、自営業は時間の縛りがないから自由とはいえ、会社の就業時間みたいには仕事を終われない不自由さもある厳しさも痛感しました。でもそれが自分で経営していくということだという心構えにもなります。

岩本さんのもとで最初からものをつくり上げていく過程がリアルに見られた経験はきっと就職先である住設部門の仕事にも活きてくると思いました。お客が何を求めているかを第一に考えてつくりたいものにアプローチしている岩本さんの姿を見習いたいし、『継手意匠店』のインターン生になれてよかったです。いつか自分が起業するなら、お客様の要望をくみ取りながら、お洒落だけどその人の色が出るもの、それはデザインだけじゃなく、IT技術も組み込んで暮らしを便利にするキッチンをつくり上げ、オンリーワンを打ち出していきたいですね」。

岩本 守雅さん

「目標や課題に対して何をすべきかをしっかり考えられ、しっかり自分の意見も言えて、欠点が見当たらないぐらい。そんな伊藤君にあえてアドバイスするとしたら、もっと“人を笑かす”ことかな。デザインや設計の中だけじゃなく、あらゆる場面で遊びの感覚をもっと意識していって欲しいです」。

編集:きど たまよ  撮影:黒川 博司

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